【天風録・12.29】:憲法25条と避難所
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.29】:憲法25条と避難所
広島大初代学長も務めた思想家の森戸辰男は、ことし没後40年だった。日本国憲法制定に衆院議員として関わり、この画期的な権利を付け加えた足跡も知られる。「健康で文化的な最低限度の生活」。つまり生存権である
▲憲法25条のその言葉を題名にした漫画が世に出て10年。東京の区役所で生活保護を担当する新人ケースワーカーの奮闘を描いて人気を集め、ドラマ化もされた。久々に新刊を手にし、場面ががらり変わったのに驚いた
▲大災害である。台風による荒川の洪水で首都が広く水没し、250万人が避難所に身を寄せる。女性や要配慮者のスペースの確保、被災者の心のケア…。混乱続きの現場を若き公務員の目で捉える設定に引き込まれた
▲作者柏木ハルコさんも事前取材で疑問を抱いたに違いない。令和日本の避難所で本当に生存権が守られるのかと。懸念された通りに災害関連死が急増した能登半島地震と重ねたくもなる
▲政府は1人当たりの面積など避難所の改善にやっと着手した。憲法の権利を守れなかった歴代政権の責任を思う。森戸は「政者正也」という論語の言葉を好んだ。政治とは正しい道を行うこと―。能登の被災地は避難所がまだ残る。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年12月29日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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