《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を
これでは女性は医療を受けるに値しないと言うに等しい。いかなる理由があろうとも、人権をないがしろにすることは許されない。
イスラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンで、医療教育機関への女性の通学が禁じられた。医学部を含む中高等教育からは既に締め出されていたが、助産師や看護師などの養成学校は例外的に認められていた。
男性の医療従事者による診療などを女性が受けることはタブー視されている。女性の担い手がいなくなれば、劣悪な医療環境がさらに悪化しかねない。
助産師は、現在でも2万人近く不足している。世界保健機関(WHO)の推定では、1日当たり24人の妊産婦が命を落としている。死亡率は日本の100倍以上で、世界最悪の水準だ。
タリバンが3年前に実権を握った際、内外に表明した統治方針とも矛盾している。
「イスラム法の枠内で」との条件付きながら、女性の就労や教育を容認する姿勢を見せていた。だが実際には締め付けを強める一方である。
国連機関や国際NGOで働くことが禁じられた。今年8月に制定された法律によって公の場で歌ったり、大きな声を出したりできなくなり、全身や顔を布で覆うことが義務づけられた。夫や親族以外の男性を見ることも禁止された。
パリ・オリンピックでは国際オリンピック委員会(IOC)が男女3人ずつを招待したが、タリバン当局者は「女子スポーツは禁じられている」と語り、男性だけを自国代表とみなすと表明した。
戦火で疲弊した経済の復興は進んでいない。地震や洪水、干ばつの被害を繰り返し受けてもいる。国連によると、人口の5割を超す約2400万人が支援を必要としている。
抑圧的な統治を続けるタリバンは各国から非難されており、政権として承認した国は一つもない。国際的な孤立が一因となって、十分な支援が届いていない。
人道危機に手を差し伸べるのは国際社会の責務である。日本を含む各国は、人権状況を改善するようタリバンに要求しつつ、窮状にある人々への支援を強める方策を探るべきだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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