【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも
同性婚を認める司法のメッセージがより明確になったと言える。
同性同士の結婚を認めない民法の規定は憲法違反だとして、九州の同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は幸福追求権を保障した憲法13条に違反するとの初判断を示した。
賠償請求は退けたが、全国5地裁計6件で争われている同種訴訟の二審で3件連続の違憲判断である。今回は「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」と、これまでの違憲判決と比べても強い表現で立法府に法整備を促した。
福岡高裁が13条違反を示したことで、法の下の平等(14条)、個人の尊厳と両性の本質的平等(24条)など一連の訴訟で争点となった憲法の条項全てで違憲判断が出された事実は重い。国会は最高裁の統一判断を待つまでもなく、早期の法制化に向けて議論を始めるべきだ。
福岡高裁判決で特筆すべきは「婚姻は人にとって重要かつ根源の営み」とし、同性婚の制度がない現状は13条の幸福追求権を侵害しているとほぼ全面的に認めた点だろう。同条の「公共の福祉に反しない限り」との規定についても検討し、同性婚の存在は異性婚の権利を妨げず、公共の福祉に反しないと結論付けた。
同性カップルを自治体が公的に認める「パートナーシップ制度」は、導入する自治体が450を超えたが居住地によって運用の差があるなど課題が残る。判決は「同制度では不平等は解消されない」とくぎを刺し、異性婚なら認められる相続権などの法的権利がないのは「重大な制約」だと断じた。
一審の福岡地裁判決は男女の婚姻とは別の制度を設けることにも議論の余地があるとしたが、原告側は新たな差別や偏見を生む恐れがあるとして控訴した。高裁判決は「同性カップルに異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ憲法違反は解消しない」と明言し、原告らの主張を認めた。
「少数者の権利を尊重し保護することは、憲法が強く要請するところだ」との指摘を真摯(しんし)に受け止めねばならない。
二審で3件目の違憲判決を受け、公明党の斉藤鉄夫代表は「婚姻の完全平等へ法整備を進めるべきだ」とし、立憲民主党の野田佳彦代表は「国会で対応しなければならない」と述べた。自民党では保守派を中心に慎重論が根強いが、石破茂首相は同性婚が実現すれば「日本全体の幸福度は増す」との認識を示した。
共同通信社が今春実施した世論調査では、同性婚を「認める方がよい」が73%だった。国民の理解が進み、立法を促す司法判断も積み上がっている。政治が決断する時だ。
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