《社説①》:初の孤独・孤立調査 実効性ある政策が急務だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:初の孤独・孤立調査 実効性ある政策が急務だ
日々の生活で「孤独」を感じている人は約4割に上り、高齢者より20~30代が多い。国による初の調査でこうした実態が明らかになった。
背景には社会的な要因があると指摘されている。必要な支援を受けられずに孤立すれば、心身の健康を損ないかねない。
政府は孤独・孤立対策担当相を設けて対策に乗り出している。昨年12月、重点計画をまとめ、「居場所づくり」の推進や相談体制の整備などを打ち出した。
調査では孤独を感じやすい人の傾向が浮かび上がった。
世帯の年収が低い人や失業中の人、派遣社員で多く見られた。未婚の人や離婚した人も高い割合だった。
こうした調査結果を踏まえて、対策を再点検することが必要だ。
新型コロナウイルス禍も影響している。「人と直接会ってコミュニケーションを取ることが減った」と答えた人は約7割に上った。この1年で、孤独を感じる人が増えたという民間の調査もある。
孤独・孤立の問題に詳しい石田光規・早稲田大教授は「コロナ禍が収束しても以前のような付き合いは戻らず、他者とのつながりが薄れる人が増えるだろう」と指摘する。
高齢者の場合、介護サービスなどを通じて公的機関の目が届きやすいが、若者は孤立しても周囲に気付かれにくい。
行政やNPOからの支援を受けていない人も多い。調査では、孤独感が強い人ほど、どこに支援を求めればよいか分からない状況もうかがえた。
政府や自治体がまず力を入れなければならないのは、相談したり、支援を受けたりしやすい環境を整えることだ。
夜間にSNS(ネット交流サービス)で相談を受けている民間団体もあるが、スタッフが不足している。こうした活動を後押ししてほしい。
先進的な取り組みで知られる英国では、雇用や教育などさまざまな分野の政策に孤独対策の視点を盛り込んでいる。
日本も一過性の対応で終わらせてはならない。調査を重ね、実効性ある政策につなげることが求められている。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年05月25日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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