【文科省】:2024年度から制度改正 自殺の動機にもなる「奨学金返済苦」深刻な現状
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【文科省】:2024年度から制度改正 自殺の動機にもなる「奨学金返済苦」深刻な現状
警察庁などの自殺者に関する統計で、2022年から大学生の自殺の動機や原因に関して、より具体的な細目が加えられ、その中に奨学金返還の項目があった。奨学金返済が自殺の動機とみられるケースは10人となっている。内訳は、男性が20~30代の6人と、女性が10~20代と40代のあわせて4人だった。こうした統計から2021年以前も、奨学金返済を苦にした自殺は、相当数あったと想像できるだろう。
<picture></picture>
奨学金返済を苦に自殺するケースも
日本学生支援機構(JASSO)によると、2020年度の大学生の奨学金利用率は49.6%で、30年前の20%台から大幅に上昇した。終身雇用で年々賃上げがあり返済が楽になっていく時代は去り、大学を卒業しても非正規労働者になるケースも目立ってきており、奨学金の返済はかなりきびしくなっている。マスコミでは、卒業後に日本学生支援機構などの貸与型奨学金ローンの返済に苦しむ実例が報じられている。返済不要の給付型奨学金は、大学や企業などで出てきているが、まだ少ない。
わが国の今の財政状況では、日本学生支援機構などの公的型奨学金は、これからも貸与型が主体になるだろう。奨学金の社会的役割には、優秀な人材を育てるという育英と、憲法26条と教育基本法4条に基づく教育の機会均等の確保、という二つの要素がある。
日本の奨学金のメインである日本学生支援機構の奨学金が、原則として貸与型なのは、教育機会の均等の観点から、多くの希望者に対して返済金で新たな貸与に回せるからだ。貸与型奨学金の返還金を次の世代の奨学金の原資にするので、広く多くの希望者に奨学金を渡せるので教育の機会均等にふさわしい。
ただ日本学生支援機構の8割を占める貸与型では、卒業後の返還期間は12~20年に及ぶ。同機構の調査では返済の延滞者の約7割が年収300万円以下だ。同機構の貸与型奬学人には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金とがある。前者は学校の成績や世帯収入などの条件があり、後者は有利子と言っても、銀行などより金利は低い。
文部科学省は、2024年度から奨学金制度を改正する。授業料減免などは、現行の世帯年収が380万円以下から600万円以下の年収までひろげる。その対象は、扶養対象3人以上の多子世帯や、私立大などの理工農系学部に通う学生を対象に文系学部との授業料の平均的な差額を支援の対象とする。
また、大学院生(修士)が卒業後、一定の年収を超えてから返済を始める授業料後払い制度もあわせて発表した。
さらに貸与型奨学金の減額返還制度の柔軟化として、本人の収入制限が緩和され、返還割合が低い1/4も加わっている。少しは改善されるようであるが、返還額と率が減る分、返還期間が伸びる。経済状況が好転しなければ、ローン返済で苦しむ時間がのびる。
奨学金問題を抱える米国では、何十万人という学生がストライキや抗議デモなどを行い、バイデン大統領から『一部帳消し(返済免除)』の発言を引き出した。
英国では、大学の授業料は在学中に払う必要がない。学費は公的ローン(貸与型奨学金)でまかない、生活費ローンも加えれば、在学中は勉強に専念できる。卒業後の返済は、完全な所得連動型であり、低所得者の返済猶予や利子補給が充実している。また、現行では30年を経過すると、その債務が帳消しになるので、老後不安はなくなる。
日本でも抜本的な奨学金返済サポートを開始すべきだ。
▽木村誠(きむら・まこと)
1944年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、学習研究社に入社。『高校コース』編集部などを経て、『大学進学ジャーナル』編集長を務めた。著書に『「地方国立大学」の時代』(中公新書ラクレ)、『ワンランク上の大学攻略法』(朝日新書)などがある。
元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・2022年から大学生の自殺の動機や原因に関して、より具体的な細目が加えられ、その中に奨学金返還の項目】 2023年07月30日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます