《社説①・11.25》:政府の経済対策 規模ありきは容認できぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.25》:政府の経済対策 規模ありきは容認できぬ
物価高対応などを盛り込んだ経済対策を政府が閣議決定した。
必要な経費として13兆9千億円を計上した2024年度一般会計補正予算案を、28日からの臨時国会に提出する。
低所得世帯への給付金やガソリン料金の補助継続といった生活支援に加え、半導体産業の振興、「闇バイト」対策といった幅広い事業がメニューに並ぶ。
自治体や民間の支出分を合わせた全体の事業規模は、39兆円程度になると推計している。
並んだ対策それぞれに、一定の意義はあろう。ただ、厳しい財政状況を押してでもいま本当に必要な事業かどうか、真剣に検討した上での決定とは思えない。
石破茂首相が「昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい」と言い始めたのは、衆院選が公示された10月15日。少数の政権幹部で決定し、財務省に通告があったのは前日深夜だったという。
中身より先に規模が決まっていたことになる。有権者に大盤振る舞いをアピールし、選挙を有利に運ぼうとしたのではないか。
23年度の補正予算は13兆1992億円で、事業規模は37兆4千億円。なぞったように上回る金額が打ち出された形となった。
財政規律を顧みない「規模ありき」の編成と言わざるを得ない。国会で徹底的に精査し、必要性を見極めていかねばならない。
補正予算はそもそも、災害などで当初予算では足りなくなった場合に緊急に編成するものだ。物価高に苦しむ人を支えるなら対象を十分に絞るべきだろう。
中長期的に考えるべき産業政策をわざわざ含めたのも理解しがたい。予算規模を満たす狙いがあったのではないか。
ここ数年、補正予算は新型コロナ対策などで膨張が続いた。コロナ前の19年度に3兆2千億円だったのが、20~22年度は31兆6千億~73兆円で推移した。
こうした状況を踏まえ、政府は今年6月に決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、「歳出構造を平時に戻す」と掲げていたはずだ。大きな方針を安易に覆したとの批判は免れない。
国の財政は長年、政策に必要な経費を税収などで賄うことができず、借金、つまり国債の発行に頼る状態が続いている。1990年度末に166兆円だった国債の発行残高は増加を続け、現在は1000兆円を超えている。
目先の人気取りのため財政負担を安直に先送りすることなど、到底容認できない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月25日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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