【社説・12.10】:川崎米軍機墜落63年 今日につながる惨事だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.10】:川崎米軍機墜落63年 今日につながる惨事だ
過去の出来事としてではなく、今日につながる惨事としてとらえる必要がある。
1961年12月7日、旧具志川村(現うるま市)川崎の集落に嘉手納基地を離陸した米軍戦闘機が墜落して2人が死亡、6人が重軽傷を負った事故から63年がたった。
59年6月30日に起きた宮森小学校ジェット機墜落事故と並ぶ米軍機墜落による惨劇である。二度と県民の生命・財産を傷つける事故が起きないよう、私たちは事故の原因や背景を厳しく見つめ、語り継がなければならない。
川崎に墜落したのは米軍戦闘機F100であった。「音速を超えた世界初の実用戦闘機」として57年に嘉手納基地に配備されたが、開発段階から事故が多発していた。機体の大破や死者が出る「クラスA」の重大事故は58年だけで168件に上り、操縦士47人が死亡している。
F100は「欠陥機」との指摘があったにもかかわらず、米軍は沖縄で運用を続け、宮森小や川崎の事故を起こした。宮森小墜落について米空軍がまとめた事故調査報告書は「最大の要因は整備ミスだった」と結論付けた。その事実は伏せられたまま、川崎の事故が起きたのである。
このような「欠陥機」の運用とミスの「隠ぺい」を私たちは今日の目で検証しなければならない。同じような状況は今も続いているのだ。
2012年に普天間飛行場に強行配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイもF100と同様、開発段階から事故が多発している。今日に至るまで「構造的欠陥」が指摘され続けてきた。
16年12月には普天間所属機が名護市安部で墜落している。昨年11月には鹿児島県屋久島沖で横田基地所属のCV22が墜落した。今年10月27日には与那国に飛来していた陸上自衛隊のV22が離陸する際に不安定な状態となり、機体の一部が損傷した。
さらには先月25日、米ホワイトハウス職員らを輸送していた米海兵隊のMV22のエンジンが燃え、飛行停止となっている。米民主党連邦議会議員がオースティン国防長官に対して、オスプレイの運用停止を求める書簡を送った。
深刻な事故が繰り返されているにもかかわらず、日米両政府はオスプレイの欠陥を認めようとはしない。
与那国の事故について中谷元・防衛相は「安全性について累次の機会に確認しており、問題はないと考えている」と述べている。この防衛相発言に明確な根拠があるのか。オスプレイの事故で明確な原因と再発防止策が示されたことはないのだ。
欠陥を認めず、ミスを隠し、事実を説明しない。事故を引き起こした米軍の体質は今も改まらないばかりか、自衛隊も同調するような事態だ。これが新たな事故の要因となる。今に続く悲劇として県民は宮森小や川崎の事故と向き合っているのである。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月10日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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