【社説・01.05】:25年 軍事基地と沖縄 戦争準備止めねばならぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.05】:25年 軍事基地と沖縄 戦争準備止めねばならぬ
南西諸島を要塞(ようさい)化する自衛隊の南西シフトは今年、敵基地攻撃能力(反撃能力)を備えたミサイルの配備へと段階が上がる。民意を無視して進められる辺野古新基地建設は、大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事が本格化する。米軍と自衛隊の訓練演習もさらに激しくなるだろう。
「台湾有事」を前提にした戦争準備をこれ以上許せば、沖縄は80年前と同じ戦場になってしまう。沖縄に一層の負担と犠牲を強いて、防衛力の抜本的強化に突き進む政府の強硬姿勢を、何としても改めさせなければならない。
政府は2022年末に閣議決定した安全保障関連3文書で、敵国の弾道ミサイル拠点を遠くから攻撃することができる「反撃能力」の保有を盛り込んだ。防衛省は自衛隊が保有するミサイルを「能力向上型」に改良した上で、25年度から配備を始める方針を既に示している。
現時点で配置場所は明確になっていないが、石垣島や宮古島、沖縄本島にあるミサイル部隊の装備を置き換えていく対応が想定される。
政府は、敵基地攻撃能力は日本へのミサイル攻撃を思いとどまらせる抑止力だと主張する。しかし、抑止力を名目にした軍拡やミサイル発射実験がエスカレートしている。攻撃力の高い武器の配備は、有事の際に相手からの攻撃目標となることを意味する。
政府は宮古や八重山地域から九州への避難計画の策定や、避難シェルターの整備を本格化させる構えだ。しかし、抑止力一辺倒では住民の生命や財産を守れない。近隣諸国との緊張を緩和する外交がなければ、離島住民の安心はないことを心すべきだ。
そのためにも国是である専守防衛に立ち返ることだ。沖縄や台湾の周辺で挑発的な軍事行動を抑制するよう各国に呼び掛ける必要がある。
名護市辺野古の新基地建設を巡っては、政府が沖縄県に代わって設計変更を承認した代執行から1年となった昨年12月28日、沖縄防衛局は大浦湾の海底に砂をまく作業を行い、軟弱地盤の改良工事が始まったと言い立てた。反対の民意や自治体の意見を封殺し、埋め立ては止められないという既成事実を躍起になって積み上げている。
住民視点の欠如は自衛隊も深刻だ。沖縄戦を指揮した日本軍第32軍の牛島満司令官の「辞世の句」を陸上自衛隊第15旅団(那覇市)がホームページに掲げていた問題で、第15旅団は部隊史の画像を載せる形で辞世の句を再掲載した。
第32軍は本土決戦の時間稼ぎのため、沖縄を捨て石にする持久戦で甚大な住民犠牲をもたらした。皇国史観に基づく辞世の句の掲載を続け、戦前の日本軍との連続性を否定しない第15旅団の判断に危うさを覚える。
押し付けられる国策に沈黙してはいけない。現在を「新しい戦前」にしないという決意を広げる必要がある。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月05日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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