《社説②・01.10》:羽田衝突事故から1年 教訓踏まえ再発防がねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.10》:羽田衝突事故から1年 教訓踏まえ再発防がねば
複数の人為ミスが重なる事態は起こり得る。事故を引き起こさないための仕組みを構築することが欠かせない。
羽田空港で昨年1月、日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、国の運輸安全委員会が調査の中間報告を公表した。
海保機が許可を得たと誤認して滑走路に進入し、それを管制官が認識せず、着陸中の日航機も気づかなかった。その三つが重なって事故が起きたとの見方を示した。
海保機の機長は「滑走路に入って待機するよう、管制官に言われた」と運輸安全委に説明した。実際には、滑走路手前の停止位置に向かうよう指示されていた。
ボイスレコーダーの解析では、機長と副操縦員は指示の一部しか復唱・確認せず、離陸に向けた準備を進めた。
前日に発生した能登半島地震の救援物資を運ぶところだった。機体トラブルで出発が遅れており、乗員の帰宅時間も考え、機長は離陸を急いでいた。
土壇場で事故を回避できる可能性もあった。衝突の15秒前、別業務に当たる管制官が滑走路上の海保機に気づいた。だが、注意喚起のメッセージがきちんと伝わらず、対応は取られなかった。
管制のシステムにも問題があった。卓上のモニター画面に、滑走路への誤進入を知らせるアラート表示が出たが、管制官は認識していなかった。
作動時にどう対処するかは定められておらず、差し迫った危険がなくても表示されることがあるため、軽視されていたという。
事故後、注意を喚起する音が鳴るように改められ、管制官も増員された。
運輸安全委は調査を続け、最終報告をまとめるが、時間がかかる見通しだ。それを待たずに、ハード、ソフト両面で安全対策を講じる必要がある。
デジタル技術を活用して関係者が危険情報を共有する新たなシステムの開発なども求められる。
羽田空港は訪日外国人の増加などに伴って発着枠が増え、世界的に見ても過密な状態にある。今後も航空需要の拡大が予想される。
調査で判明した事実を教訓にし、再発防止に向けた取り組みを進めなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月10日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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