【社説・12.03】:国会代表質問/政治改革の覚悟が見えぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.03】:国会代表質問/政治改革の覚悟が見えぬ
石破茂首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。
石破政権は衆院選で少数与党となり、自民、公明両党だけでは予算案や法案を通せない。山積する政治課題に首相が具体的な処方箋を語り、与野党が緊張感を持って論戦を重ね、丁寧に結論を導く熟議が求められる。だが首相は所信表明をなぞる答弁が多く、議論は深まらなかった。
首相は所信表明で政権運営の基本方針として、自公連立を基盤に「他党からも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、真摯(しんし)に謙虚に取り組む」と述べ、野党への配慮を強くにじませた。一方で、自民派閥裏金事件を受け、多くの野党が廃止を求める企業・団体献金の扱いには触れなかった。
合意形成に力を注ぐ姿勢は大事だが、信頼回復がなければ政治は前に進まない。密室での数合わせに走ることなく、国民本位の議論ができるのか、首相の本気度が問われる。
立憲民主党の野田佳彦代表は企業・団体献金の禁止を重ねて求め、「なぜ議論の俎上(そじょう)に載せようとしないのか」と首相の対応を批判した。
首相は「自民党としては不適切だと考えていない」と否定した。幅広い合意形成を重視するというなら、避けては通れない問題だ。
野田氏は使途公開不要な政策活動費の全廃も迫った。しかし首相は、外交の秘密などを理由に非公表の支出を残そうとしている自民案を維持する考えを示唆した。政治資金を監査する第三者機関は「国会内に置くことを基本」としたが、具体策は明らかにしなかった。裏金事件の実態解明に向けた再調査にも言及していない。これでは政治改革に対する覚悟を疑わざるを得ない。
経済対策では、野田氏が巨額の補正予算案に緊急性や効果に乏しい事業も多く含まれるとして、野党の主張を取り入れ修正するよう求めた。財源は国債頼みであり、次世代の負担も増す。十分な審議が必要だ。
国民民主党の議員は、与党と協議を進める「年収103万円の壁」の引き上げに伴う税収減対策などをただした。首相は「各党の税制協議で議論を深めてほしい」と述べた。政策決定に携わる以上、国民民主にも財源確保策を示す責任がある。
首相は総裁選で前向きな姿勢を見せた選択的夫婦別姓制度の導入について「国会の議論を注視していく」と述べるにとどめた。与野党で共有できる政策課題の一つである。自民党内の慎重論を抑え、実現への道筋を探ってほしい。
代表質問に続き、一問一答形式の予算委員会が開かれる。首相は厳しい質問にも正面から向き合い、国民に響く言葉で説明を尽くすべきだ。
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