【社説・11.28】:女児刺殺事件/全容解明し対策に生かせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.28】:女児刺殺事件/全容解明し対策に生かせ
17年前に地域社会を震撼(しんかん)させ、安全体制見直しの契機となった事件が大きな節目を迎えた。警察は全容解明に全力を尽くし、さらなる防犯対策につなげてもらいたい。
加古川市内で2007年10月、小学2年の女児の胸などをナイフで突き刺し殺害したとして、兵庫県警は27日、殺人容疑で勝田州彦(くにひこ)容疑者(45)を逮捕した。県警によると、認否について「黙秘します」としている。女児は事件直後、犯人像について救急隊員に「大人」「男」と告げていた。
勝田容疑者はたつの市内で06年9月、小学4年の女児の胸や腹を刃物で刺し重傷を負わせたとして、殺人未遂容疑で今月7日に逮捕されていた。いずれの事件も待ち伏せして見知らぬ女児を襲った疑いがあり、県警は連続女児襲撃事件とみている。
同容疑者は、岡山県津山市で04年9月に小学3年の女児が胸や腹を刺され殺害された事件で無期懲役が確定している。3事件とも勝田容疑者の犯行とすれば、なぜ同様の事件を繰り返したのか。成育歴の影響など動機解明が欠かせない。
津山の事件では供述が変遷したとされる。加古川とたつのの事件は目撃証言や物証が乏しい。県警は供述とこれまで得た証拠などを厳密に照らし合わせ、慎重に捜査を進めてほしい。取り調べの全過程を録画し、供述誘導などの疑念を持たれないようにする対策も重要だ。
勝田容疑者が捜査線上に浮上したのは、姫路市内で15年5月に中学3年の女子生徒の腹などを刺して重傷を負わせた殺人未遂事件=懲役10年が確定=がきっかけとされる。服役中の昨年9月に津山の事件の判決が確定し、今年5月以降の任意聴取に対し兵庫の2事件への関与を認める供述をしたという。
同容疑者はほかにも、明石市や姫路市、高砂市、太子町、三木市などで少女が襲われた事件に関与したとされる。特定の地域で類似事件が相次いだ点は重く受け止めなければならない。それぞれ初動捜査や捜査方針に問題がなかったのか、事件の連鎖を食い止め、防犯対策に生かすすべはなかったのかなど、課題の検証を進めてもらいたい。
加古川の事件などをきっかけに登下校の見守り活動が強化され、防犯カメラの設置も進んだ。その後も子どもが性犯罪などに巻き込まれる事件は相次ぎ、安全対策への社会的要請は強まっている。
6月には子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設法が可決され、施行に向けた準備が進む。人権への配慮と防犯対策を両立させ、さまざまな方策に知恵を絞る必要がある。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月28日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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