【社説・11.18】:【敦賀原発不合格】:決定を重く受け止めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.18】:【敦賀原発不合格】:決定を重く受け止めよ
安全性を重視した妥当な判断と言える。突きつけられた結論を重く受け止める必要がある。
原子力規制委員会は、日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)の審査不合格を正式決定した。不合格は2012年の規制委発足後初めてとなる。
規制委はこれまでに、原子炉建屋から北約300メートルにあるK断層が活断層で、建屋直下まで延びている可能性が否定できず、原発の新規制基準に適合しないと結論付けていた。新基準は活断層の上に重要施設の設置を禁じている。
原電は再審査を申請する方針で、即時廃炉とはならない。新たに試掘溝を掘って調査する計画などを具体化して、本年度中に公表するとしている。ただ、規制委の結論を覆す新証拠が必要となり、活動性の否定は困難とみられている。敷地内を走る活断層「浦底断層」の影響も無視できない。ハードルは高そうだ。
断層問題は重大な関心事だ。規制委の有識者調査団は13年、2号機直下の断層は活断層だと評価し、原電は反論する形で15年に審査を申請した。しかし、審査資料で千カ所以上に記載不備があり、データの無断書き換えも発覚した。
規制委は2度にわたり審査を中断している。原電本店の立ち入り調査も行われた。
原電は課題に誠実に向き合っているのか、事業者としての資質に疑念さえ向けられる。山中伸介委員長は「大いに反省してほしい」と厳しい言葉を投げかけている。安全を確保するという大前提を軽視するかのような姿勢では信頼性を確保できるはずはない。
原電は東海第2原発(茨城県)も再稼働が見通せない。原発専業であり、所有する全2基は11年5月の運転停止から発電ゼロが続く。経営の両輪は運転停止の長期化が見込まれる状況だ。
それでも売電先の大手電力5社から「基本料金」を受け取ることで経営を維持している。電力料金に上乗せされ消費者が負担していることを忘れてはならない。
政府は近く取りまとめる経済対策に、電気代抑制へ安全性が確保された原子力発電の最大限活用を盛り込む方向だ。石破茂首相は10月の所信表明演説で「利活用」と言及したが、原発回帰を鮮明にした岸田政権の路線を踏襲することになる。
巨大地震が想定される日本で、原発の安全性は維持できるのかという疑問は根強い。東日本大震災による甚大な事故の教訓は、原発に依存しない社会の実現だ。言うまでもなく、安全性に疑念がある原発の再稼働が認められてはならない。
敦賀2号機は今回は不合格決定となったが、これまで建屋直下に活断層がある可能性が否定できない場所で稼働していた事実は無視できない。自然災害の想定は難しいだけに、新たな知見からの検証を繰り返し安全性を高める必要がある。問題があれば立ち止まる実効性のある制度の構築が求められる。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月18日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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