【社説・11.24】:バス運転手の不足 官民で「地域の足」守りたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.24】:バス運転手の不足 官民で「地域の足」守りたい
バスの運転手不足が深刻化している。
京都市は9月、市バスの運転手が足りず現行ダイヤの維持が難しいとして、「非常事態宣言」を初めて出した。
これまで地方で表面化していた減便や廃止が、東京都や横浜市など都市部でも広がっている。利用者が多くても運転手が確保できず、路線の維持がおぼつかない現状だ。
「地域の足」をどう守り支えるのか。事業者だけでなく、国や自治体、住民も危機感を共有し、解決への道を探りたい。
地方の人口減に伴い、経営縮小による運転手の人員削減と高齢化が進んでいたが、今春からドライバーの残業上限規制を強化した「2024年問題」が、不足をより顕在化させた。
日本バス協会は24年度で2万1千人分足りないと試算する。すでに全国で減便や廃止が相次いでいる。京都府北部では9月末、運転手不足で路線バスの一部が廃止された。
滋賀県が先日公表した調査では、主要バス事業者8社で53人不足しているという。本年度に減便された民間バス路線は31路線、廃止は2路線だった。不足分を補うため役員や管理職が運転業務に入る事業者もあるといい、「ぎりぎりで路線を維持している」と悲痛な声が上がる。
非常事態を宣言した京都市は、大型2種免許を所有していない人を対象に新規採用を緊急募集し、70人枠に2倍超の応募があった。だが免許試験に合格しない人らを考慮すると、不足分の確保は見通せないという。
ある現役運転手は5時間の勤務後、仮眠などに充てる4時間の休憩を半分削ってバスを走らせ、残業もした。休日出勤の求めにも対応し、11連勤もあったと告白する。厳しいやりくりで、運転手の負担が増していることが分かる。
各バス事業者はこれまで、運転手の給与引き上げや短時間勤務など柔軟なシフトの導入、女性採用の環境整備、定年の延長といった対策を講じている。
新型コロナウイルス禍で大幅な収益減となり、離職が増えた経緯もあり、中長期的な経営の安定化も重要な課題である。
政府は今春、外国人労働者を受け入れる特定技能制度の対象に、バス運転手などを新たに加えた。コミュニケーションや安全管理への高い能力が求められるだけに、教育制度の充実や助成が問われよう。
宮津市では廃止路線の代替で、住民が運転する「交通空白地有償運送」が始まるなど、都市部と地方では対策も異なる。
バス運転手は、医療や介護の担い手と同じく、社会機能の維持に必要な「エッセンシャルワーカー」にほかならない。
人手不足の中で、持続的に確保する方策を地域の官民で知恵を絞り、国が後押しする仕組みをいっそう強化すべきだ。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月24日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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