【社説①】:韓国与党敗北 対日関係に影響が及ばぬよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:韓国与党敗北 対日関係に影響が及ばぬよう
任期を3年残す韓国の尹錫悦大統領の政権基盤が揺らぐ結果となった。日韓関係に悪影響が及ばないよう望みたい。
韓国の総選挙で、尹政権の保守系与党「国民の力」が過半数を大きく割り、敗北した。
左派系の最大野党である「共に民主党」は議席を積み上げ、単独過半数を確保した。共に民主党との連携を表明している左派系新党「祖国革新党」も躍進した。
与党は、野党側による大統領の 弾劾 訴追案の議決を阻止できる議席をかろうじて得たが、尹氏はこれまで以上に、少数与党での厳しい政権運営を迫られる。
韓国の大統領は任期が5年で、再選がない。今回の与党の敗北により、尹氏の求心力低下が加速することは避けられまい。
懸念されるのは、日韓関係への影響だ。就任以降、尹政権が一貫して進めてきた対日関係の改善は、最大の外交成果と言える。
昨年3月には、両国間の懸案だった元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題を巡り、韓国政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う解決策を発表し、悪化していた日韓関係を正常化した。
これに対し、野党は「譲歩しすぎで屈辱的だ」と批判してきた。次期大統領選に向け、野党側が選挙で示された「民意」を背景に、「対日屈辱外交」との尹政権批判を強めるのは確実だ。
今回の選挙では日韓関係が大きな争点にならなかった。
尹氏が対日政策を転換するとの見方はほとんどない。尹氏には、日本との良好な関係が韓国の利益になると、国民に粘り強く訴えることを期待したい。
北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、緊張が高まる中で、日韓関係の重要性は増している。日本政府も、関係改善の流れを維持するため、首脳間のシャトル外交を継続していくことが欠かせない。
尹政権は内政面の課題も多く抱えている。物価高や少子化、若者の就職難などに、有効な手立てを打てず、国民の支持が広がらない要因となっている。
一方、妻が知人から高級バッグを受け取る動画が拡散した問題では謝罪を拒み、職権乱用疑惑で捜査を受けていた前国防相を大使に任命して出国させた問題では、与党の反対を無視したという。
自らの考えにこだわる尹氏の姿勢は「独善的」との批判を招き、今回の選挙では、主に無党派層の票が野党に流れた。尹氏は選挙の敗因をしっかり分析し、今後の政権運営に生かすべきだろう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月13日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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