《24色のペン・01.06》:「第三の性」の人たちが来たら=川上珠実
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.06》:「第三の性」の人たちが来たら=川上珠実
インドの首都ニューデリーにある自宅でテレビを見ていると、外の通りから軽快なリズムを刻む太鼓の音と陽気な歌い声が聞こえてきた。
前夜は、同じアパートに住む大家の息子の結婚式だった。式の翌日、新婚の妻が親族に伴われて、これから一緒に暮らす夫の家にやってきたのだ。にぎやかな太鼓の演奏は、妻を出迎えるための演出だ。
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
私は外を眺めようとベランダに近づいた。すると、「だめ! 隠れて!」と、我が家のベビーシッターの女性が鋭い声を上げた。「ヒジュラ」と呼ばれる人たちが来ているからだという。
ヒジュラとは、現地で男性でも女性でもない「第三の性」の人々と捉えられている。きらびやかなサリーを身にまとい、新婚の夫婦や赤ちゃんがいる家に現れては、歌って踊り、祝福を与える。生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致しないトランスジェンダーや、身体的な性が男女のどちらとも一致しないインターセックスの人などが含まれる。
なぜ彼らを見にいってはいけないのか。ベビーシッターいわく、…
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