《社説①・01.10》:芸能界の慣行調査結果 自由な活動を守る契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.10》:芸能界の慣行調査結果 自由な活動を守る契機に
芸能界で長年続いてきた悪弊にようやくメスが入れられようとしている。アーティストの権利や、自由な芸能活動が守られる環境を整えなければならない。
公正取引委員会が音楽や放送業界における契約トラブルなどの実態調査結果を発表した。芸能事務所へのアンケートや、芸能人、放送事業者へのヒアリングに加え、情報提供も受け付けた。
浮かび上がったのは、個人の自由な活動がおびやかされかねない実態だ。
芸能人からは、移籍・独立するとその後の活動を一切できなくなると事務所から脅されたり、悪評を移籍予定先やマスコミに流されたりしたとの回答があった。独立後に芸名やグループ名を使用できなくなるといったケースも報告された。
公取委はこうした妨害行為が、独占禁止法に違反する「優越的地位の乱用」や「取引妨害」などになり得るとの見解を示した。
事務所側に注意喚起をするとともに、今後、どのようなケースが法律上の問題になるのかを示すガイドラインを策定する。トラブルを未然に防ぐのが狙いだ。
芸能人は事務所と専属マネジメント契約などを結ぶことが一般的だ。だが、業務全般を依存しているため立場が弱く、権利関係などの知識が十分でないことも多い。専属している間は契約に縛られるが、そもそも契約自体も口頭だけという事務所が約3割あった。不利益を被ることになりかねない。
政府は成長戦略の一環として、アニメや音楽、放送番組というコンテンツ産業の活性化を掲げる。ただ、アーティストが安心して働けるような環境が整備されなければ、才能を十分に発揮できない。
ハラスメントなどに対する社会の目が厳しくなる中、若者の意識も変化している。芸能界は体質を改め、業界の持続的発展につながる道を探るべきだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月10日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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