【卓上四季・05.04】:畑にある「文化財」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.04】:畑にある「文化財」
まさかりかぼちゃ、ラワンブキ、キャベツの「札幌大球(たいきゅう)」、タマネギの「札幌黄(き)」、ハッカの「あかまる」、八列トウモロコシ、函館赤カブ。道内各地に長く根づいてきた代表的な伝統作物だ。これらの情報を掲載する「在来品種データベース」のオンライン公開が始まった
▼北海道から沖縄まで44都道府県の280種を国立研究開発法人「農研機構」のサイトで紹介する。産地や呼び名、食べ方、流通状況をくわしく解説し、現地で栽培する様子などの写真も添えた。各地の作物を見るうち、知らない土地を旅する気分になる
▼在来品種は地域の気候や風土に合わせて人々が改良し、守り育ててきた野菜や雑穀だ。地域の食文化やくらしと深く結びつき、遺伝資源としての価値も高い
▼地域の宝なのに、姿を消しつつある品種が少なくない。生産者の高齢化に加え、高収量の新しい品種に押される。まさかりかぼちゃも例外ではない。皮が硬くて長期保存できるため重宝されたが、高度成長期から栽培する農家が減り、風前のともしびに
▼道内を含めて全国で現地調査し、今回のデータベースの情報を集めた山形大の江頭(えがしら)宏昌教授は言う。「在来品種は生きた文化財。地域の歴史や文化を伝えるメディアと言えます」
▼国内には2千種以上あるとされる。関心を持つ。育てる。味わってみる。できることから始め、先人が残してくれた宝を守りたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2024年05月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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