アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

鋭い忘却力を武器にする

2017年01月20日 | ピアノ
譜読みが苦手な人は、どのみち舞台上で楽譜を見ながら演奏できないってんで、基本暗譜必須。だからいつも暗譜で弾いていて、必然的に暗譜がうまくなる。

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というわけで、譜読み(初見)得意系と、暗譜得意系になんとなく分かれてることが多いかなと思うんだけど…もちろん両方できる人がいるわけだから「私は譜読み得意だから暗譜は苦手なのっ!!」などという言い訳していいわけないけど…


人類に、言葉があっても文字がなかったころって、全部「口伝」しかやりようがないわけで、すごい記憶力だよねー

プラトンさんが「人は文字を学ぶことで記憶力が減退し忘れっぽくなる」といってたらしいけど(笑)
確かに、文字に頼るせいで、ユダヤ教のモーセ五書を暗唱で伝えていくほどの記憶力を持つ人もほとんどいなくなったかもしれない。でもそれで人類が退化したとかいうことではなく、ほかのことをするようになったという感じかな。頭の使い方の傾向が変わったというか。

私も、記憶力が悪いことにかけては左に出るものがいないくらいだけれども、だからといってこれまでの人生経験が全部消え失せて意味のないものになっちゃってるのではなくて(それではマトモに生活できない)、あるものは外部記憶に蓄えそれをさっと参照できるようにして済ませている、と。ただ、やっぱりそれだけじゃないはずです。

頭の中になんとなくの「雰囲気(?)」が残っているからこそ、参照や活用もできるわけだし、具体的な内容を忘れてしまったあとも「勘」は働くというふうには役立っているんだと思います。

上述のプラトンさんの言葉は「脳はこんなに悩ましい」(池谷裕二/中村うさぎ)から引用しましたが、これはすごくおもしろい本で、池谷さんはこのブログ(または中受ブログのほう)で紹介したことあるけど最先端の脳科学者で、うさぎさんはまぁ(解説不要)。これ、池谷さんからの熱烈オファーで実現した本らしいけど、ほんとうさぎさんは勘が鋭くて、とてもイキイキした対談になってます。

この本の中で、「ひらめきと直感は違う」って話が出てきます。ひらめきは、たとえば数列の虫食いのところに入る数を思いつくみたいなことで、ひらめいたあと理由が言える(「数字が二倍ずつ増えているから」とか)。直感は、別に材料がないわけではないはずなんだけど、無意識のなせる業で、自分でも説明ができない。

私はこれでいうとものすごく「直感」寄りの人で、どのくらいスゴいかというと、なんでもかんでも忘れるわ、理解も足りないわ、でもペーパーテストなら問題製作者と交信(?)して「きっとこう答えてほしくて作った!!」ってひらめいて点数だけけっこう取れちゃってそれで大学受験もなんとかなっちゃうくらいスゴい。

それだけ勘が働くようになったのは、それまでに忘れに忘れた膨大な知識が役に立ってるからだと思うんです。私の感触でいうと、具体的な内容が忘却の彼方に沈む時、ふと立ち上ってくる淡いエッセンスのようなものがあって、知識の代わりにそのエッセンスだけ蓄えているところが強みなんだと思うんです。たとえば、英語の文法問題でカッコがひとつ空いてて、前後を見ると実際出会ったことがある文とは違ってても、「ここに入るのはwithだ!!」って当たっちゃうような。そう、大学受験でいうと、この鋭い忘却力がいちばん役立ったのは英語です。単語もハッキリとは覚えてないけどそれがかえっていい(ような気がする、誰も同意してくれないけど)

この本の中で、池谷さんはこんなことも言ってます:
「一回で覚えてしまうような鮮烈な記憶力は、メリットばかりではないんですよ。写真で撮ったみたいに一発で覚えるほうが、脳回路にとっては負担が少ないはずです。見えているものをそのままコピーすればいいだけですからね。実際、下等な脳を持っている動物は写真記憶が得意みたいです。ヒトの脳は、写真を撮ったように覚えてしまうことに、むしろ抑制をかけている。正確に覚えないように気を遣っているように見えます。だからこそ、これだけ人間のイマジネーションが豊かになったと思うのです」

楽譜を、写真みたいに記憶して、頭の中の箪笥にしまっておいて、それを出してきて弾くだけだから暗譜なんて簡単といってたピアニストがいましたが(誰だったか忘れた。話を盛ってる可能性はあるが、視覚優位な記憶をするタイプの人なんだろう)、それのマネはどう逆立ちしても一生できない。でも暗記できないことにきっと私なりの意味はあるはず。

(つづくのか?)

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