カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

ナゾの犬

2013-08-06 23:28:16 | 即興小説トレーニング
 そいつを雨の中で見付けたときは、何たって酷い有様だった。例えるなら濡れそぼった上にゴミが絡まって汚れるだけ汚れたモップだ。

 ヒャンヒャンとしか聞こえない声で泣くので一体何という動物だろうと思いながら連れ帰り、風呂場で洗ったら犬のように見えたので、多分犬だろうと見当を付けて友人の小沢に電話を入れた。
 犬のようなものを拾ったと話すと、完全猫飼い派の小沢は凄まじく嫌そうに話を打ち切ろうとしたが、何とか頼みこんで良い獣医を紹介して貰う。

「言っておくが、食べ物だろうとミルクだろうと人間のものは食わせるな。連中にとっては毒だ」
 そんな忠告を受けた後で礼を言って電話を切った俺は、段ボールに古タオルを敷いた中に犬のようなものを入れ、獣医まで連れて行って診て貰った。
 単に腹を空かしているだけで病気はないと言われたので、取りあえず推奨ドッグフードと犬飼いに必要な用品を購入することにした俺は、先程から不思議に思っていた事を訊ねてみる。
「ところで、これなんて種類の犬ですか?」
 すると獣医は少しだけ眉をひそめて答えた。
「うーん、雑種なのは確かだけど、これだけ混じっていると、ちょっと判らないね」

 取りあえず両親に頼みこんだ結果、世話は俺がやるという約束で飼いはじめた犬に『もっぷ』と言う名前を付け、新しい生活が始まった。
 もっぷは頭が良く、トイレの躾やお手、お預けや取って来いなど一度教えただけで完璧に覚えた。
相変わらず外観からは何の動物か判りづらかったが、雑種犬だと紹介すると大抵の人は納得してくれた。

 もっぷとの生活は楽しいが、一つだけ気になることがある。
 たった一年で大型犬と同じ大きさになったコイツは、最終的に一体どれだけでかくなるのだろうか?
 
 
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