カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

ぶっく・ばぐす

2013-08-17 20:46:28 | 即興小説トレーニング
 『細雪』は読んだことがないなあ、と、悠は言った。
「そもそも日本の純文学?っての、昔はあまり判らなくて、まあ年相応に今で言うライトノベルとか推理ものとか、あとは何か執拗に実録犯罪ものを読んでいたかな。『FBI心理分析官』がブレイクする遥か前の話だけど」
「今で言う…… って、昔はラノベのことなんて言ってたの?」
「ニュアンスは大分違うけどジュブナイルかな。他にも何かあった気がするけど思い出せない」
「ファンタジー小説とかは読んでた?」
「エンデは何冊か、あと洋物で特に印象的だったのは『ペガーナの神々』、『ピポ王子の冒険』、『ラベンダードラゴン』かな。実は『ナルニア』シリーズは映画になってから読んだ」
「推理ものって、本格推理小説?」
「いやいや、乱歩に横溝、あとは割と初期の高橋克彦とかしか読んでない。『殺戮に至る病』は読んだけど、あれは作者の我孫子がゲーム脚本書いてた関係で興味持ったし」
「それじゃ、子どもの頃はどんな本を?」
「あんまり覚えてないなあ。印象深い内容で未だに忘れられない本もあるけど。実はうちの小学校、貸し出しカードが六年記録されてて、卒業時に返してくれるんだけど、僕は校内二番目の貸し出し数だったってさ」
 まあ、小学生の頃って、多分僕の人生の中で一番本を読んでいた時期だと思うよ。週末になると家から四キロくらい離れた図書館に歩いて通って本を限界数まで借りたりしていたし。そんな悠に私は答えた。
「知ってるよ。と言うか有名だったんだよ悠、本の虫だって」
 へ?そうなの。というか、何で聡美がそんなこと知ってるんだ?と尋ねてきたので、私は言った。
「だって、あの学校で図書貸し出し数が校内三番目だったの、私だから」   
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