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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

イタリア良いとこ一度はおいで

2013-08-15 21:53:28 | 即興小説トレーニング
 パスタを食べないと死んでしまうんだ。

 友人にそう言われて『ならとっとと死ね』と即座に答えられるほど、俺は人ではない。
 故に理由を聞いてみると、先日友人がイタリア旅行から戻った際、どうも地元の幽霊を連れ帰ってしまったのが原因らしい。

「だからパスタを」
「そう言うことだな」

 友人に憑いてきてしまった幽霊は、何だかいかにもイタリア男という感じの軽薄そうな若者で、悪霊でもなければ大した影響力もない、いわゆる普通の幽霊らしいのだが、とにかく友人の耳元でパスタが食べたいパスタが食べたいと囁き続けて非常に煩いのだそうだ。

「お陰で旅行から帰ってきてから米の飯が食えない」
「それは大変だな」

 何とか本国にお帰り頂く方法はないかと聞かれて、俺は極めて適当に頭に浮かんだことを口にした。つまり、和風パスタだけ食ってたらどうだと。
 こちらとしては冗談のつもりだったのだが友人によると効果は抜群で、イタリア男の幽霊はいたく憤慨してどこかに行ってしまったらしい。例え本国に帰れなかったとしても、この辺りには本格イタリア料理店が何軒か有るので何とかなるだろう。と言うか、自分で何とかして欲しい。

 それが一年前の話で、懲りもせずにイタリアを再度訪れた友人は、今度は小太りの、いかにもイタリアのマンマという感じの中年女性に憑かれてきた。

「だからピッツァを」
「一人で勝手に寿司ピザでも食ってこい」


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勇者の贈り物

2013-08-15 14:30:10 | 即興小説トレーニング
 友人にスマホを落とされた。
 本体はともかくケースが割れて酷いことになったが、いい加減買い替え時だと思っていたのであっさり許した。
 
 ちなみに、ケースは透明なプラスチック製のものを素体に粘土で自作したマーブルチョコを幾つも並べて貼り付けたデコスイーツ仕様で、友人が必要以上に恐縮したのもそのせいだった。別に自作だからまた作ればいいと私が言ったのは本心だったが、それを額面通りに受け取れるほど友人の神経は太くなかったらしい。

 そんなわけで暫く後、友人は『自分では作れないから』と、私が作った自作ケースに似たデザインで市販のものを必死の思いで探し当ててプレゼントしてくれた。それがどれほど大変だったかは、店頭でもネットでも全くイメージ通りのケースが見付からなくて結局は自作に走った私自身が、それこそ痛いほどに良く判っていた。

『わざわざ有難う』と本心から答えた私は、実は数日前に新しいスマホに乗り換えたばかりだった。

 私の部屋の机脇の壁に、真新しいスイーツデコケースに入った今は使われていないスマホが吊してあるのは、実はそう理由があってのことなのだ。

 ちなみに友人は現在、私が以前プレゼントしたスマホケースを、いつか使う日が来るだろうと机の引き出しに仕舞い込みつつケータイを使っている。  
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