「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

       バンクーバーの遠い戦争の記憶

2010-02-10 06:22:14 | Weblog
僕の遠い遠い記憶の中に第21回冬季五輪の開催地「バンクーバー」がある。それも先
の戦争と関係がある気がした。そこで調べてみたら、やはりそうだった。1942年(昭和1
7年)6月28日、日本の潜水艦「伊26」号が、バンクーバー沖のエスデヴン島のカナダ軍
無線羅針局を14センチ砲で砲撃した、という記録が残っていた。

当時まだ僕は小学校6年生である。なぜこんな小さな事件を記憶していたのか不思議だ
が、多分、緒戦の頃、戦意昂揚のためか米本土へのシンボリカルな艦砲射撃が行われ
ており、新聞ラジオで大きく報道されていた。バンクーバーもその一つで、名前のおかしさ
もあって僕の記憶の片隅にあったのかもしれない。

今想い出すと、昭和17年という年は緒戦の勝利で日本中が沸き立っていた。僕ら子どもは
大本営発表の勝利の軍艦マーチに喜び、世界地図の上の南方の占領地を赤く塗り変えた
りしていたものだ。しかし、一方では、早くも4月には、太平洋上から飛来したドーリットル率
いる爆撃機が東京、名古屋、神戸などを初空襲し、被害も出ていた。

同じ4月には、米本土とははるか離れたインド洋上から、日本の艦載機動部隊がセイロン
(スリランカ)の首都、コロンボを空襲している。大変な戦線拡大であった。これでは長期作
戦では勝目がなかった。この年の後半には早くも敗戦への急坂を降り始めてきた。

平和な時代が嬉しい。ほとんどの日本人が68年前、日本の潜水艦がバンクーバーへ砲弾
を撃ち込んだことなど知らない。