「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

      八方美人はダメ 勝海舟の外交論

2010-02-11 06:50:33 | Weblog
「チェンジ」「改革」の時流に乗って”幕末から明治”への歴史本が静かなブームだそ
うだ。僕も先日入院中の病床で勝海舟の「氷川清話」を読んでみた。勝海舟は徳川
の幕臣で、江戸城の無血明け渡しのさい、官軍の西郷隆盛と交渉した人物。明治政
府になってからも新政府に対してアドバイス、影の実力者として影響力があったとされ
ている。

海舟は、この本の中で薩長中心の新政府に対して辛辣な批評をしているが、中でも
彼の外交論は面白かった。海舟によれば、外交の秘訣は”明鏡止水”の気持ちで誠
心誠意で事にあたること。”八方美人”外交はダメだという。海舟は機に臨み、変に応
じても”明鏡止水”の心境に立ち、他人の意見を聞くべきではない。聞けばただただ迷
いの種になるばかりだ。甲の人の説を聞くと、それも暴(あら)いように思われ、乙の人
の説を聞くと、それも暴(あら)いようになり、自分の定見がなくなってしまう。八方美人
主義ではその主義の奏功にばかり気を取られて国家のために大事業はできないという。

引用が長くなってしまったが、僕は鳩山由起夫総理の普天間基地移転をめぐる迷走を
思い出してしまった。総理は5月までには結論を出すそうだが、そもそも、この問題につ
いて総理は最初から自分が決断すると言っていた。八方美人では問題を複雑にするだ
けだ。明鏡止水の心境に立ち返り誠心誠意、外交に当たるべきである。