「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

            世田谷ボロ市この半世紀

2011-12-17 07:44:02 | Weblog
昨日、老妻と連れ立って何年かぶりで世田谷ボロ市に出かけた。わが家から距離にすればせいぜい一里(3・75㌔)ちょっとの所だが、なかなか行く機会がない。半世紀以上も前、娘がまだよちよち歩きの頃、歩いてボロ市にでかけ、赤い色の古靴を買ってきて、まだ元気だった母親からえらく叱られた。初孫に他人様の使った"お古”などはかせるものではないというのだ。当時のボロ市は代官屋敷前の通りが中心で臼や杵といった正月用品や農機具などに混じって古着や骨董品を売る店が多かった。

話には聞いていたが、最近のボロ市は規模が大きくなり代官屋敷の前の通りだけではなくなった。そしてものすごい人出である。観光バスで訪れる人もあるという。あまりの人出で通りは渋滞を整理するため一方通行である。買物好きの老妻は、一軒一軒冷やかすように歩いているが、僕には欲しくなるような品はない。やっと500円出して中国製の革バンドを買った。昔感じた"土”の匂いはない。代わって焼鳥とかエスニック料理の匂いが漂っている。売っているものもアジアングッズが多い。

代官通りから入ったところにある土地の神社の境内では名物になった"代官餅”に長蛇の列である。半世紀前には、細々と地元の人が餅つをして売っていた記憶だが、今は買った"代官餅”を神社の拝殿の石段に腰掛けて食べている若者もいた。400年もの伝統を誇る東京都の無形民族文化財のボロ市だが、僅かこの半世紀ですっかり様変わりした。母親に叱られた赤い色の古靴などどこにも売っていない。売っていても誰も買う人などいないだろう。