「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        ”黒い雨”の真実と米国の占領政策

2012-08-07 06:09:22 | Weblog
広島原爆忌の昨日、夜8時からNHKテレビで放送されたスぺシアル番組「黒い雨67回目の真実」を見た。広島に原発が投下された昭和20年8月6日の直後、市の北西部を中心に”黒い雨”が降ったことは、よく知られている。”黒い雨”は原爆炸裂時に空中に拡散したゴミ,ホコリ、チリなどが放射性降下物だが、当時の人はそんな事とは知らず、まったく無防備にこれを浴びていた。

”黒い雨”が一般に知られるようになったのは戦後昭和41年、作家の井伏鱒二が被爆体験者の日記をもとに作品「黒い雨」を発表、これが映画化されてからだ。しかし、その実態や被爆者への健康への影響はほとんど明らかにされていなかった。ところがNHKのスぺシアル番組によると、米国のABCCは放射線影響研究所)は”黒い雨”について当時調査していて、その分布図まであり、1万3千人が影響を受けたと推定していた。このことは、今まで知られなかったが、昨年暮、長崎の研究者の問合せによって明らかになった。

広島の平和記念式典は昭和22年から始まっているが、当時、米国の代表的写真雑誌「ライフ」は”まるで南部の未開地のカーニバルだ”と酷評している。当時の米国人の考え方は原爆によって戦争が終わった、というが一般的な認識で、原爆被害の実態については、詳しく知らされておらず、反省も同情もなかった。しかし、一方では原爆の被害の全容が日本人の間に広がることへの占領政策への影響を恐れていた。自らの被爆体験をもとに原爆投下直後の広島の悲惨さを描いた太田洋子の「屍の街」は、3か月で作家は作品を書き上げたが、出版されたのは昭和24年になってからで、GHQ(連合軍司令部)の検閲の影響があったといわれる。

”黒い雨”の健康被害への影響はどうなのか、被爆者の平均年齢が78歳という今、調査は困難だが、福島原発事故との関連もある。関係者により出来るだけの調査を期待したい。