Galina Vishnevskaya sings Tchaikovsky-Concert 1964- p.11
20世紀ロシア、いいえソビエトのプリマドンナ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤが亡くなった。
86歳だった。
ヴィシネフスカヤというとボリショイ第一のソプラノとされ、偉大なチェリストであるムスティスラフ・ロストロポーヴィッチの夫人であり、スターリン体制を批判した夫とともに、芸術家としてのすべての称号をはぎとられ、国外追放になった。
また作家のソルジェニーツインを擁護し、かくまったこともその原因のひとつだった。
私は子供の時、何度もこのチャイコフスキーの歌曲を聴いた。
ロシア語はわからないけれど、なんて美しいのかと思った。
この曲の名はチャイコフスキーの歌曲「なぜ」。
ピアノ伴奏は夫のロストロポーヴィッチ(チェリストだが、ピアノはリヒテルの代役をするほどの腕前)
なぜ、と何度も繰り返しながら歌われる美しい歌曲だ。
ロシア語ができたら、歌いたかった。
夫妻はペレストロイカで祖国に帰ることができたが、ロシアの人々の熱烈な歓迎を受けた。
晩年は指導に専念し、多くの芸術家を育成。
ヴィシネフスカヤは著書『ガリーナ自伝』で、ソ連の暴政を書き、何も知らなかった日本の左派は大きなショックを受けたという。
レーニングラード包囲の時、孤児となり貧しい少女時代を過ごし、やがてソプラノ歌手としてボリショイの名花とうたわれたヴィシネフスカヤのすさまじいばかりの人生も知った。
ご冥福をお祈りします。