その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロイヤル・オペラ・ハウス/ ファウスト (グノー)

2011-09-25 10:20:59 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 役者が揃うと舞台が映える。それにつきる今夜の「ファウスト」でした。ロイヤルオペラにしては滅多にない豪華メンバーを歌手陣に揃え、一番心配だったゲオルギューのキャンセルもなく、スター達がその持ち味を十分に出しきった舞台でした。

 ファウスト役のヴィットリオ・グリゴーロは、昨年、「マノン」でネト嬢を食うほどの衝撃のロイヤルオペラデビューをかざった(こちら→)のが記憶に新しいです。この日も劇場内一杯に響き渡るテノールは健在で、溌剌と若きファウスト博士を演じていました。ただ、「マノン」の時ほどの突き抜け感を感じなかったのは、やはり廻りを重量級の歌手に囲まれたからでしょう。



 特に悪魔メフィストフェレス役のルネ・パーペは傑出した存在感でした。迫力の低音は悪役の魅力たっぷり。歌も演技も重心の低い安定感は、逆にファウストのグリゴーロがちょこちょこしたチンピラに見えてしまい、いいんだか、悪いんだかと思ったぐらいです。



 マルグリートのお兄さんヴァランティン役のホロストフスキーもさすがスターのオーラが出まくりでした。今一つ声の通りが悪い低音は個人的には好みではないのですが、第4幕のファウストとの決闘に破れ、死を迎える場面などは迫力の歌唱と演技で、緊張感ある見せ場を作ってくれました。



 ゲオルギューはもう出てくれただけで私は満足。最近のROHでの「アドリアーナ・ルクヴルール」や「椿姫」の出演はチケット購入出来なかったので、とにかくキャンセルがないことを願っていました。今夜マイクを持った事務員が出てこないうちに1幕の音楽が始まったことが何と嬉しかったことか。その念願のゲオルギューは、歌も良かったですが、それよりも、可憐だけど不幸な マルグリートの演技の方が印象に残りました。ファウストに置かれたた宝石箱の宝石を身につけて「宝石の歌」を歌う可愛らしさや、赤ん坊を殺してしまって牢獄に居る狂気の演技は、見る者をぐーっと舞台に感情移入させてくれます。



 脇役陣やコーラスも素晴らしく、大いに盛り上げてくれました。特にジーベル役のミシェル・ロジエはズボン役がとってもお似合いで、声も美しい。是非、「フィガロの結婚」のケルビーの「ホフマン物語」のニクラウス役をやって欲しいと思いました。

 エヴェリーノ・ピド 指揮のオケも文句なしで、グノーのドラマチックな音楽をダイナミックかつ美しい演奏でした。



 ちょっと思ったのは、このオペラ、劇的で良くできているとは思うのですが、不要に長くないでしょうか?3幕のファウストがマルガリータを口説くシーンや5幕のパーティー(バレエ)シーンはあそこまで引っ張らなくても良い気がします。正直、緊迫したシリアスな場面とバカ騒ぎの場面が交互に続くので、見ている方も疲れます。ただ、長く感じるのは、全5幕で正味3時間以上のオペラを1回の休憩で済ませようとするロイヤルオペラ側の省エネ編成のせいかもしれませんが。

 いずれにせよ、先週に引き続き素晴らしい公演でした。今シーズンのロイヤルオペラ、出だし快調です。これからも期待したいです。





(以下、ロイヤルオペラハウスのFBから)


 








Faust
Saturday, September 24 7:00 PM


Credits
Composer: Charles-François Gounod
Original Director: David McVicar
Revival Director: Lee Blakeley
Set designs: Charles Edwards
Costume designs: Brigitte Reiffenstuel
Lighting designs: Paule Constable
Choreography: Michael Keegan Dolan
Revival choreography: Daphne Strothmann

Performers
Conductor: Evelino Pidò
Faust: Vittorio Grigolo
Méphistophélès: René Pape
Marguerite: Angela Gheorghiu
Valentin: Dmitri Hvorostovsky
Siébel: Michèle Losier
Wagner: Daniel Grice§
Marthe Schwertlein: Carole Wilson
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする