その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

A.シーグフリード (著), 鈴木 一郎 (翻訳)  『ユダヤの民と宗教―イスラエルの道 』 (岩波新書 青版)

2011-10-06 22:05:04 | 
 海外に居ると、読める(日本語の)本がどうしても限られてしまうのが難点だが、日本に居たら絶対に読まないだろうなあと思う本を読むことがあるのは面白い。本書もその一つ。ロンドンの日本語古書店で見つけた1967年第1刷の岩波新書青版。フランス人の学者が書いた翻訳本で原作は1957年出版である。

 西暦紀元前2000年頃のアブラハムの時代から現代に至るまでのユダヤ人の歴史を描いているが、キリスト教分離までの記述が全体の2/3を占める。40年以上前に書かれた古い本ではあるが、歴史を扱う本なので古さは感じない。ユダヤ人についての歴史考察というのはこうやって綿々と引き継がれていくのだろうと、変なところで感心した。

 きっとユダヤ人のことをもっと知ろうと思えば、日本人に向けに分かりやすく書かれている本があるだろう。でも、クリスチャンの西洋人から見たユダヤ教、ユダヤ人について書かれた本というのも参考になる。「西洋は理性と秩序の意識をギリシャとローマから受けついでいるが、同時に一神教と道徳の法則、預言者のもたらした義に対する畏敬の念や不安や懊悩をユダヤからうけっている。」(p2)などと西洋人に書かれると、「なるほど」と妙に説得力があるように思ってしまうのである。

 翻訳も読みやすいので、手軽にユダヤ人の歴史について知るのには、手ごろな一冊。
コメント (2)
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