その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

LSO/ デイヴィス/ ベートーベン ピアノ協奏曲第3番 (内田光子) ほか

2011-10-03 23:16:45 | コンサート (in 欧州)
 暑い日中はフラットに引きこもり、夕方、満を持してバービカンホールへ出撃。

 もう19:00過ぎには暗くなるまで日が短くなったが、日中の陽の余熱を持ったバービカンセンターのテラスは、10月とは思えないほどの暖かさで、ビールがぴったりの気候。



 この日は、デイヴィス御大による、ハイドン、ニールセン、そしてトリが内田光子さんのベートーベンピアノ協奏曲第3番というプログラム。

 冒頭のハイドンの交響曲第92番は、「つべこべ下手な理屈を考えるよりも、素直に音楽の美しさ、楽しさを存分に味わいなさい」とお説教をされているような演奏。リラックスしてただ音に浸る。そんな感じ。

 好対照に2曲目のニールセン交響曲第1番はすごい爆演。最初からフィナーレまでペースやパワーが緩まることなく、ほとばしる若さで駆け抜けるような演奏。1階席の前から12列目ぐらいの位置だったが、凄い音に耳が痛くなるほど。ただ、初めて聴く曲のためか、結局、私には聞き所がわからず、ただただ呆然とパンチドランカーのように打たれまくって、訳もわからないまま、圧倒されただけということになった。圧倒はされたが、感動はない。ちょっとニールセンは苦手かもしれない。



 そして、圧巻は休憩後の内田光子さんのベートーベンのピアノ協奏曲3番。内田さんのピアノはこの日が3回めだが、間違いなくは今までで最高に胸が揺さぶられた。

 ベートーベンとは思えない優しい暖かさ一杯の演奏で、一つ一つの音が弾んでいて、気持ちが入っている。いつもの顔芸は控えめだったけど、全身全霊を傾けて弾いているのが良くわかる。この人のピアノを聴いて思うのは、とても純粋な方だろうということ。ベートーベン的な激しさとか、厳しさという情熱よりも 純粋に音楽を楽しもうとする思いが音ににじみ出ている。彼女がモーツァルト弾きであることは有名だが、このベートーベンもモーツァルトの曲のように優雅なピアノに聴こえた。ピアノやオーケストラが一方的に目立つわけでなく、デイヴィス御大やオーケストラとの息もぴったりで、厚い信頼関係の上にある、至福の演奏だった。

 ロンドンの聴衆に内田さんは大人気である。演奏が終わると、明らかに電車の時間を気にしてすぐに席をたつ人以外は、立つ気配が全くない。止むことのない拍手に何度も呼び出されていた。



2 October 2011 / 19:30
Barbican Hall

HAYDN Symphony No 92 ('The Oxford')
NIELSEN Symphony No 1
BEETHOVEN Piano Concerto No 3

Sir Colin Davis conductor
Mitsuko Uchida piano
London Symphony Orchestra
コメント
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