その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ ホフマン物語

2012-03-11 09:53:15 | オペラ、バレエ (in 欧州)

ホフマン物語は私の好きなオペラのひとつ。美しい音楽と強烈に個性豊かな登場人物が作り出す幻想的なホフマンワールドが何とも魅力的だからだ。実演では2008年11月にロイヤルオペラで見たことがあるだけなので、今回のイングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)の公演はとっても楽しみにしていた。

なのに、不覚にも開演時間7:00を7:30と勘違いし、10分の遅刻。幸い2階のバルコニーの後方席に入れてもらえたので、たいして見逃したことにはならなかった。でも、この日は奮発してストール席のチケットを買っていたので、自分のせいだとは言え、第2幕終了までは3ランク下の席に座らざる得なかったのは何とも悔しいやら、情けないやら・・・。

公演のほうは、主要な歌手陣がいずれも素晴らしく、オーケストラも熱演で、とても充実した公演だった。

ホフマンを歌ったBarry Banksは一昨年にロイヤルオペラで『ドン・パスクワーレ』でErnesto役を歌ったのを聴いたが、この日も柔らかくよく通るテノールはうっとり聴き入ってしまう。私のイメージするホフマンよりは随分、優等生的だったが、歌は文句なし。

そして、この日の大活躍は、この物語の歌姫4人(ステラ、オランピア、アントニア、ジュリエッタ)を全て一人でこなしたアメリカ人のソプラノGeorgia Jarman。プログラムを観てもアメリカの中規模都市のオペラハウスを中心に歌っているようで、それほどメジャーな人ではないようなのだが、高音の美しさ、声量の大きさいずれもなかなかのものだった。加えて、とっても美貌の持ち主で、これならホフマンが惚れるのも無理は無い。全くキャラの異なる4役を演じるのは相当大変だと思うのだが、今度はどんな雰囲気で出てくるのか?が段々と楽しみになるような変化ぶりだった。

あと、これまた悪役の4役(リンドルフ、コぺリウス、ミラクル、ダベルトっト)を全てこなしたClive Bayleyも迫力あるバリトンで、悪の凄身を際立たせていた。

この物語では隠れた主役ニクラウス/ミューズは、ENOの「ファウストの劫罰」マルグリート役やROHの「ヘンゼルとグレーテル」のヘンゼル役で聞いたChristine Rice。ちょっと私のイメージよりも大きく、太いのがビジュアル的に難点だが、パフォーマンスは文句なし。

この4名の主要歌手陣に加えて、オーケストラも良かった。指揮のRichard Jonesはピッツバーグオペラの音楽監督をされているらしいが、非常に色彩豊かな音楽を作る指揮ぶりで、オッフェンバックの音楽の魅力をたっぷり引き出していた。

今回のプロダクションは、新演出でRichard Jonesによるバイエルン州立歌劇場との共同制作。ロイヤルオペラで「3部作」「アンナ・ニコル」「賭博師」らを手掛けている人だが、私の好みではなかった。一言で言うと、ホフマンの思い出の中の話であるにも関わらず、ちょっとリアリティがあり過ぎる舞台に見えたからだ。観察者的な人物3名を常に舞台に登場させたり、第4幕では何故かゴリラが登場したりして、いろんな仕掛けはあるのだけど、私には意図不明で、かえって夢を醒めさせるように映った。もっと、夢の中に浸っていたいのに。

しかし、全体としてはとっても満足のいくもので、私のENO好きはますます高まって行くのであった。


Sat 10 March 2011

Tales of Hoffmann

Opéra Fantastique in five acts
By Jacques Offenbach
Libretto by Jules Barbier
Based on the play by Jules Barbier and Michel Carré
Edited by Michael Kaye and Jean-Christophe Keck

Credits
A co-production with Bavarian State Opera, Munich
New production supported by The Colwinston Charitable Trust

Conductor Antony Walker
Director Richard Jones
Set Designer Giles Cadle
Costume Designer Buki Shiff
Lighting Designer Mimi Jordan Sherin
Choreographer Lucy Burge
Translator Tim Hopkins

Cast includes
Hoffmann Barry Banks
Olympia/Antonia/Giulietta/Stella Georgia Jarman
Lindorff/Coppelius/Dapertutto/Dr Miracle Clive Bayley
Muse/Nicklausse Christine Rice
Frantz/Pittichinaccio/Cochenille Simon Butteriss
Crespel/Luther Graeme Danby


コメント
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