村上春樹さんが小澤征爾さんを、村上さんのレコードを一緒に聴きながらインタビューした記録。ベートーベンピアノ協奏曲第3番、マーラーの交響曲、バーンスタインとカラヤン、音楽教育などが遡上に上り、世界有数の指揮者と(きっと)世界有数のレコード愛好家の間で、知的で興味深い会話が繰り広げられる。
全編を通じて、療養・リハビリ中でありながら精力的、情熱的に音楽を語る小澤さんの人間性、音楽に対する愛情がにじみ出ている内容になっている。村上さんも相当に聴きこんでいて、演奏や解釈について、かなり細部に渡って質問や議論を投げかけていて音楽論としても面白いが、全体として本書を振り替えると、そこには音楽を通じた小澤さんの人生や姿勢が語られている。
例えば、僕がすごいと思ったのは、マーラーの交響曲一番を巡っての会話。村上さんは小澤さんが録音した3枚のレコードを年代順にかけて、その演奏、解釈の変化について小澤さんと話をする。 数十年かけた小澤さんの変化も面白いが、本人は今でも変化し続けているという。
「僕くらいの歳になってもね、やはり変わるんです。それもね、実務の経験を通して変わっていきます。それがひょっとしたら、指揮者という職業のひとつの特徴かもしれないね。つまり現場で変化を遂げていく。・・・」(p264)
もちろん本書での会話は、村上さんの広く深いクラシック音楽に対する聴き手としての経験、見識なしには成り立たない。村上さんの提示する論点から、音楽を聴き方の一面を知ることができるのも面白い。私は、今までもそしてこれまでも、楽器を演奏することはないと思うが、聴き手としての力を伸ばして、もっと音楽を楽しめるようになりたいと純粋に思わせてくれる。
全編を通じて、療養・リハビリ中でありながら精力的、情熱的に音楽を語る小澤さんの人間性、音楽に対する愛情がにじみ出ている内容になっている。村上さんも相当に聴きこんでいて、演奏や解釈について、かなり細部に渡って質問や議論を投げかけていて音楽論としても面白いが、全体として本書を振り替えると、そこには音楽を通じた小澤さんの人生や姿勢が語られている。
例えば、僕がすごいと思ったのは、マーラーの交響曲一番を巡っての会話。村上さんは小澤さんが録音した3枚のレコードを年代順にかけて、その演奏、解釈の変化について小澤さんと話をする。 数十年かけた小澤さんの変化も面白いが、本人は今でも変化し続けているという。
「僕くらいの歳になってもね、やはり変わるんです。それもね、実務の経験を通して変わっていきます。それがひょっとしたら、指揮者という職業のひとつの特徴かもしれないね。つまり現場で変化を遂げていく。・・・」(p264)
もちろん本書での会話は、村上さんの広く深いクラシック音楽に対する聴き手としての経験、見識なしには成り立たない。村上さんの提示する論点から、音楽を聴き方の一面を知ることができるのも面白い。私は、今までもそしてこれまでも、楽器を演奏することはないと思うが、聴き手としての力を伸ばして、もっと音楽を楽しめるようになりたいと純粋に思わせてくれる。