その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

10年ぶりに都響を聴く  インバル/ 都響/ バルトーク・プログラム

2013-12-22 00:04:47 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

〈3・11の地震で中止となったプログラムの復活です〉

 ツイッター上でインバルさんと都響のマーラーチクルスの評判がすこぶる良いので気になっていました。残っているマーラー8,9番の演奏会チケットはあという間に売り切れたらしく、乗り遅れた私は他にはないのかと思っていたところに、このバルトーク・プログラムのコンサートを見つけ衝動買い。

 私は都響とは何故かあまり縁がなく、手元の記録を見返してみたら、何と前回は2003年6月にベルティーニさん(故人)の指揮で聴いたブラームスのドイツ・レクイエムとブラームス交響曲第一番の2つのコンサート以来、何と10年ぶりでした。東京文化会館で聴いたこの2つの演奏会の衝撃は今でも鮮明に覚えています。というわけで、今回の演奏会は期待大でした。


≪今日の眺め≫

 しょっぱなはバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番。ソロは庄司紗矢香さん。今年1月に来日したロッテルダム・フィルと共演したプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲2番以来です。庄司さんは好きなのですが、この曲、私には難しすぎました。所々、良いなあと思うところはありますが、全体として掴みどころが分からず、ちょっとお手上げ。この日はRAエリアの席だったので、斜め後ろから庄司さんの肩を見ながらぼんやり過ごしてしまいました。ヴァイオリンは良く鳴っているのは分かるのですが、正直私にはピンと来ず、「修行して出直します」という感じ。ただ、アンコールでやってくれたハンガリーの民謡は抒情的でしんみりと心に浸みいる演奏でした。

 休憩後はバルトークのオペラ「青ひげ公の城」を演奏会形式で。これは楽しめました。まず、おどろおどろしいストーリー展開が私好み。今回はコンサート・スタイルですからプロダクションが無い分、自分の想像力で、7つの扉の先にある世界を好きなように想像できます。

 独奏のメゾソプラノのイルディコ・コムロシさんが登場した時は、まだ華奢な庄司さんのイメージが舞台に残っていただけに、あまりの違いにのけ反ってしまいました。が、歌唱はさすがハンガリー人らしく堂に入ったもので、暗譜で、簡易な演技も付けた熱演でした。一方で、青ひげ公のマルクス・アイヒェは、声は美しく通るバリトンですが、 こちらは楽譜つきでちらちらと。楽譜つきが悪いというつもりはありませんが、ヒロインが役にかなり投入しているのが分かるので、温度感の差が感じられちょっと残念でした。

 都響の演奏はしっかり安定していました。今回はRA席というオーケストラに向かって右手後方から聴いたため、正直全体のバランスとかはよく分からないところもあったのですが、インバルの指揮のもと、このオペラのオドロオドロシサも良く出ていたし、途中金管部隊の一部が舞台後方の外側から演奏するところは迫力満点です。

 インバル先生の指揮は全体の構成、輪郭を明確にしつつ、演奏は比較的オケに委ねる感じに聴こえました。もっと、細かく強い指示があるのかと勝手に想像していたのですが、前週に聴いたデュトワさんのN響のようなデュトワ色が全面に出るという感じではなく、指揮とオケが一体化している感じです。演奏後のツィートの中には、インバル先生と都響の関係が成熟してきたというようなことを書いている方がいましたが、そうしたことかもしれません。当然のように、終演後は大拍手。私も今シーズンの演奏会を締めくくるに相応しい好演に大満足で拍手を送りました。

 実は新聞チラシを見て、来シーズンの都響の「作曲家の肖像」シリーズというシーズン券を衝動買いしています。来年がとっても楽しみです。

 余談ですが、この夜の都響定期はチケット完売のはずなのに、8割ぐらいの入りでした。完売でも空きがたくさんあるのはN響だけではないのですね。日本のオケもしくはホールは早々にリターンチケット制度を導入すべきだと思います。


≪アンコール曲≫



日時:2013年12月20日(金)19:00開演(18:20開場)

場所:サントリーホール
指揮:エリアフ・インバル
ヴァイオリン:庄司紗矢香
メゾソプラノ:イルディコ・コムロシ
バリトン:マルクス・アイヒェ

曲目
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番
バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」(演奏会形式・原語上演・日本語字幕付き)



Date: Fri. 20. December 2013, 19:00 (18:20)

Hall: Suntory Hall Artists
Conductor: Eliahu INBAL
Violin: SHOJI Sayaka
Mezzo-Soprano: Ildiko KOMLOSI
Baritone: Markus EICHE

Program
Bartok: Violin Concerto No. 2
Bartok: DUKE BLUEBEARD'S CASTLE


コメント (2)
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