その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

高畑勲 監督/ かぐや姫の物語

2013-12-20 00:02:22 | 映画


 話はもちろん知っている。でも、この映画を見るのは初めてなのに、一つ一つのシーンを見て、どっかで見たことある情景だなあと思いながらスクリーンを眺めていた。ふと気づいた。そうだ、子どもの時に、寝物語で母親が読んでくれた「かぐや姫」の世界だ。忘れかけていた昔の記憶が忽然と蘇える。きっと、同じような思いに捕らわれた人も少なくないのではないか。

 かぐや姫をめぐる環境やその成長を通じて、自然、社会、人間の欲・愛を表現するこの作品は、いろんな含意があるだろう。「姫が犯した罪と罰」というキャッチコピーも意味深だ。ただ、余り難しいことは考えずに、純粋に日本の昔話を楽しむということで良いと思う。映像は美しいし、見ていてリラックスできて、落ち着く。やっぱり、自分は日本人なのだなあと思う。2時間を超える長さだが、長さを全く感じさせない。

 冒頭の竹取物語の古文(原文なのかはわからないが)の朗読も良かった。音感やリズムに浸ると日本語って美しいと思う。高校時代に無理やり読まされた古文の一節でももう一度読み直してみようかなんて思ってしまう。

 ただ、ラストのかぐや姫が月に帰るシーンだけは違和感があった。月からのお出迎えの御一行様の様子は、仏様とちんどん屋が月から地球にやって来た、やあやあや、みたいな趣で、少々興ざめだった。私のイメージは、もっと厳かなものだったから。

 今の子供たちがどれだけ「かぐや姫」に触れる機会があるのかどうかは、全く知らないけど、骨格のしっかりしたストーリー展開に加え、日本人の心性が取り込まれているこうした古典は大切にしたい。安倍首相が好きな道徳教育や愛国心教育よりも、ずっと自然に日本が好きになって、「良い」日本人が育つはずだ。

 2013年12月14日

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