新国立劇場の合唱指揮者三澤洋史さんがオペラの舞台裏を語ったエッセイ。読んでいて「へえ~、そうなんだ」と思うような裏話にあふれていて内容的に面白い上に、文章も読みやすいので、あっという間に読めてしまいます。
新国立劇場の合唱団の素晴らしさはどのオペラ公演でも際立っていて、欧州から帰国以来「日本にもこんな素晴らしい合唱団があるんだ」ととっても驚きでした。本書を読んで「こんな人がリーダーをやっていたのね」と妙に納得。
個人的に興味を引いたのは、稽古における指揮者と合唱指揮者のぶつかり合い(リッカルド・フリッツァとのやりとり)や、作品の中で合唱団をどう活かしていくかという合唱指揮者の工夫、そして一度見たことはあるけれどその良さが分からなかった「ピーター・グライムズ」の劇音楽の説明など。どのエピソードも興味深く、次回以降のオペラ鑑賞でも活かして行けそうです。
ちょっと残念だったのは、きっともっとネタはあると思うし、一つ一つのエピソードももっと深い話があると想像するのですが、題材を絞って内容も軽めに仕上げた感があるところでしょうか。だから気軽にページをめくれるという利点もあるのですが、私としては「もっと広く、もっと深く知りたい!」と思うところがありました。
オペラを観る人はその内幕劇として、観ることが無かった人にも「へえ~、オペラって面白そうだなって」思える良書です。