ちきりん(このペンネームの由来は何なのだろうか?)さんの著作は「未来の働き方を考えよう」を以前に読んだ。目の付け所が面白いなあという印象を持ったが、そのうまさは本作でも十分に発揮されている。
これから世の中に求められる能力として、マーケット感覚が鍵となるという。自分を含めた「きまり」や「しがらみ」、「空気」に縛られた人には、肚落ちする指摘が多いと思う。そのマーケット感覚を身に着けるには、(1)プライシング能力を身につける、(2)インセンティブシステムを理解する、(3)市場に評価される方法を学ぶ、(4)失敗と成功の関係を理解する、(5)市場性の高い環境に身をおくの5つの方法が大切だという。
私としては、(2)に関連して、「何らかの問題に直面したとき、「人間のインセンティブシステムに働きかけて、この問題を解決できないか?」と考えてみることです」という指摘は興味深かった。例えば、社員の遅刻が大いという問題に対して、「遅刻の多い社員は減給にしましょう」(規制脳)というよりも、「朝7時間までに出社すれば、ヘルシー朝ご飯無料でーす!」(市場脳)とかである。間違いなく、私は規制脳に囚われているな。
筆者はこうも言います。「『どうせできない』『きっとできない』『何かきっと、できない理由があるに違いない!』と考え、やってみる前から欲望を抑える癖がついてしまうと、自分のことも、そして世の中の動きもわからなくなってしまいます」(p180)。偶然だと思うが、W杯で日本代表チームを率いたエディ・ジョーンズヘッドコーチも「日本人はcannnot doに囚われて過ぎている」ということを言っていた。「日本ラグビーが国際舞台で勝てるわけがない。だって、外人のような体格がないから・・・、プロリーグがないから・・・、日本人は農耕民族だから・・・」。題材、文脈は全く違いますが、何か通ずるものを感じる。
具体的に、これを読んで直ぐに私の何かが変わることはない気がするが、自分のものの見方、考え方の癖を意識する機会にはなった。
≪目次≫
序 章 もうひとつの能力
第1章 市場と価値とマーケット感覚
第2章 市場化する社会
第3章 マーケット感覚で変わる世の中の見え方
第4章 すべては「価値」から始まる
第5章 マーケット感覚を鍛える5つの方法
終 章 変わらなければ替えられる