ヘッドハンターである筆者のキャリア論、リーダーシップ論(必ずしもタイトルにある「仕事術」ではない)。キャリア論についての筆者の著作は、タイトルは忘れてしまったが、10年以上前に一度読んだことがある。30歳までの転職はお勧めしないということが書いてあって、「ヘッドハンターなのに面白いことを言う人」だなあと思ったのと、具体的なことは忘れてしまったが首肯できる指摘が多かった記憶がある。昨今の日本企業や日本経済の状況を鑑みて、20歳代から50歳代までのビジネスマン向けに書かれた本書も、いろいろ参考になることが多い。
本書を読んで、「ヘッドハンターから見てもやっぱりそうなのか」と一番強く思ったのは、日本企業における人材育成力の劣化についての指摘。「日本の名だたる大企業が社内でリーダーを育成する能力を失ってきている」「中間管理職の延長線上で経営を担ってしまっている」「若手ビジネスマンと面談をして気づくのは、一、二回転職を経験している人材の方が、ずっと同じ会社に勤めている人より格段に優秀。・・・以前はむしろ逆」など、年齢層、ランクを問わず見られる傾向のようだ。思い当たるところが多々あるので、耳が痛い。
既に職業人生活の後半に突入している自分自身のキャリアを考える上でも参考になる。「三十代までのビジネスリーダーは、まず自分ありきで、人の上に立ち人を動かすことばかり考えています。これに対して四十歳以降のビジネスリーダーに求めれるのは、自らを犠牲にして、人を喜ばせるために働くということです。」という逆三角形の底の方で全体を支えるビジネスリーダーを目指すべきと説いている。なかなかこんな境地にはたどりつけそうにないが、心得として肝に銘じたいと思う。
《目次》
はじめに 「プロ経営者の時代」到来
序 章 「人材敗戦」──危機の本質と日本復活への道
・プロ経営者、三つの条件
・「自分探しではなく、自分試しをしなさい」
・プロ経営者になりたければ、アジアを目指せ
第1章 プロ経営者はこうしてスカウトされる
・人材を見極めるのに5年
・お金よりも自らの成長を求めよ
・プロ経営者は駅伝のランナー
第2章 日本「生き残り戦略」の主戦場となるASEAN
・「残念な国」となった日本
・日本の管理職を上回る現地エリートの給料
・アジアのエリートがあなたの上司になる時代
・圧倒的な人材不足がグローバル化のネックに
・ASEANで企画生産した商品を世界で売る時代
・中堅企業はプロユースの高級品生産に徹するべきだ
第3章 プロ経営者から学ぶリーダーの条件
・社外取締役オファーの数で分かる経営者の実力 ・プロが認めるプロとは
・「経営の達人」が語る日本的リーダー像
第4章 二十代、三十代でしておくべきこと
・若手ビジネスエリートの共通点はMBAと転職経験
・なぜ転職経験者の方が優秀なのか
・上を目指さなければ給料は一生上がらなくなる
・中央官庁から逃げ出すキャリア官僚達
・40歳までに身につけておくべきこと
第5章 四十代から五十代──決断のとき
・40歳以上は転職の覚悟を持つべき
・40歳で求められる「コペルニクス的転回」
・ビジネスマンの「心」「技」「体」とは?
・50歳で求められる「鬼手仏心」の境地
・ヘッドハンティングは過去ではなく将来を買うこと
・「人生は逃げ切れない」と肝に銘じよ
・大切なのはポストではなく成長をあきらめないこと