これは面白かった。米国で公開されたCIA文書などをもとに、日本の戦後史の隠れている部分に光をあてた一冊。主人公は読売新聞の社主であり、日本テレビも保有していた日本のメディア王、正力松太郎。彼の個人的野望と、米国国益のために日本を誘導しようとする米国CIAとの虚々実々の駆け引きが明らかにされる。そして、日本の原子力発電の導入はそうした駆け引きの産物としての一面があるということ。
正力松太郎がCIAに日本の情報を流していたり、自己の野望のためにCIAを利用していたことは本書で明らかにされているが、それをもって「正力けしからん」といきり立つのも、あまりにもナイーブであろう。当時の国際政治経済の環境下では、CIAであろうが何だろうと、利用し、利用される中で、実を取るしたたかさがなければ、生き抜いていくことはできなかったはずだ。もちろん、個人的な「欲」のために動いているとしか思えない彼を賞賛するつもりはないが、今の世の中で、CIA相手にここまでやりあえる人物がどこまでいるのかと思う。一方的にやられ、良いように操作され、それどころかご機嫌をとっているのが現実ではないか。
歴史の勉強にもなる上に、現代の国際情報戦の実態の一面も知ることができる。スパイ小説よりも面白い。