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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

深井龍之介『歴史思考 世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する』(ダイヤモンド、2022)

2023-11-08 07:30:12 | 

著者の深井さんのことは、あるオンラインの教養プログラムで、東大史料編纂所の本郷教授との日本史についての対談で知った。起業家であり、イケメン。さわやかな語り口で、日本史を含む世界史を縦横無尽に語る姿がなんとも印象的だった。偶然、地元の図書館の返却本の書棚に本書を見つけ、手に取ってみた。

過去の偉人たちの生き様を辿りながら、そこから現代を生きる我々にとっての歴史を学ぶことの意味合いを引き出すつくり。とっても平易な記載なので、読み手の対象は中高生かもしれないが、大人にとっても有意義な内容になっている。取り上げられる人物は、チンギス・カン、イエス・キリスト、孔子、マハトマ・ガンディー、カーネル・サンダース、アン・サリヴァン、武則天、アリストテレス、ゴータマ・シッダールタらである。

例えば、イエス・キリストと孔子の人生から、後世に多大な影響を残した二人だが、個人の人生としては上手くいかなかったこと、世間に迎合しなかったという2つの共通項がある。出来事の良し悪しはその時代では評価できないのだ。

個人的には第3章のケンタッキー・フライド・チキンの創始者カーネル・サンダースのジェットコースター人生に元気を貰った。人生のクライマックスは終盤に現れるのだ。

未来のことは誰にもわからないし、歴史を通じて時代の社会認知/価値観を知る。そうすれば今の当たり前も決して将来の当たり前でないことを知ることができる。「悩んでいる人がたくさんいる現代ですが、そういう人に足りないのは、自分自身に距離を置いて眺めるメタ認知です」(p193)と言い、メタ認知のための比較対象として歴史を学ぶ意義があると伝える。

2時間あれば読める。タイトルから、新しい思考技術や掘り下げた内容を期待すると拍子抜けするかもしれない。私も期待値が高かっただけに、主張を否定することはないが、思いのほかシンプルなメッセージだなあとの感想はあった。それでも、歴史を学ぶ意義について、著者のストレートな見解が提示されているので、学生さんだけでなく、「教養」を身に着けたいと考える若手社会人にも入門本としてお勧めできる。


【目次】
プロローグ 僕たちの「当たり前」を疑え——チンギス・カン
第1章 スーパースターも凡人だった——イエス・キリスト、孔子
第2章 100%完璧な人間なんていない——マハトマ・ガンディー
第3章 人生のクライマックスは終盤に現れる——カーネル・サンダース
第4章 奇跡を起こすのは誰だ——アン・サリヴァン
第5章 千年後のことなんて誰も分からない——武則天
第6章 僕らの「当たり前」は非常識——性、お金、命
第7章 悩みの答えは古典にある——アリストテレス、ゴータマ・シッダールタ
エピローグ——今こそ教養が必要なワケ

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