その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

米国東海岸旅行(4):ここは行くべき! フリック・コレクションは仮設会場で開館中 @ニューヨーク

2023-11-19 07:25:41 | 旅行 海外

ちょうど正午頃に、デラウエア州ニューアークから旅後半の滞在先であるニューヨーク到着。ニューヨークも約30年ぶりです。

ペンシルバニア駅からホテルまで、タクシーに乗ったのですが町じゅうが工事中や交通規制でひどい渋滞。駅から2キロ程度の距離にも拘わらず、30分近くかかり、料金はなんと37ドル。こんなんなら頑張ってスーツケース引いて歩けばよかったと少々後悔。

それにしても、行きかう人々の歩く速さ、車のクラクションなどの絶え間ない音、高く立ちそびえるビル群に接し、「おー、ニューヨーク」と気持ちが引き締まります。

 

【フリック・コレクション】

この日の訪問先は、フリック・コレクション。フリック・コレクションは、マンハッタンのアッパーイーストサイドにある実業家のヘンリー・クレイ・フリックの豪邸に、彼の個人コレクションを展示した美術館です。現在はその邸宅がリノベーション中で、美術館自体も閉鎖中と聞いていたのですが、近くの別の会場で(945 Madison Avenue at 75th St.)展示をしていることを知りました(2024年3月3日まで)


(仮展示場は外観は普通のビル)

フェルメールの作品を3点も保有しているとは聞いていたのですが、中に入ってそのコレクションの質と量に圧倒されました。ルネッサンス期から20世紀初頭に至るまでの西洋絵画を中心とした傑作が惜しみなく展示されています。


(これより中は撮影一切禁止です)

個人的に嬉しかったのは、ティツィアーノやベリーニと言ったイタリア・ルネッサンス、ベラスケスやゴヤなどのスペイン系、ヴァン・ダイク、レンブラント、フェルメールといったフランドル、オランダ系の絵画が素晴らしく充実していたこと。しかも、展示される小部屋は主に時代・国区分や画家ごとに仕切られて、少数の質の高い作品が実に見やすく展示されています。(フィラデルフィア美術館のような大美術館のように、展示数に圧倒され、目移りして集中できないということがありません。)

Giovanni Bellini (ca. 1424/35–1516), St. Francis in the Desert, ca. 1475–80
Oil on panel, Panel: 49 1/16 x 55 7/8 in. (124.6 x 142 cm), Image: 48 7/8 × 55 5/16 in. (124.1 × 140.5 cm)

特別展として、”Barkley L. Hendricks: Portraits at the Frick”という企画で、米国の黒人系画家であるバークレー・ヘンドリックス(1945-2017)の肖像画の作品展が開催されていました。鮮やかな色彩を使って、デザイン性が強い肖像画は非常に印象的で、中世・近代絵画とはまた違った魅力を放っていました。ただ、この特別展のため、本来あるべきイギリス絵画コーナーが相当縮小されていたのは残念でした。


Barkley L. Hendricks (American, 1945–2017), Lawdy Mama, 1969. Oil and gold leaf on canvas, 53 3/4 x 36 1/4 in. (136.5 x 92.1 cm).

週末ということもあってか、館内にはそれなりの訪問客がいました。話し声が耳に入ってきますが、専門的なコメントをしている方が多く、普段から絵を見慣れている方が多い印象です。そのためか、館内の雰囲気もすこぶる落ち着いた大人の雰囲気が漂っています。

軽い気持ちで、夜のオペラ迄の繋ぎぐらいの心持で出かけましたが、期待を遥かに上回る美術館でした。本来の会場である大邸宅での鑑賞(2024年後半開館予定)はお預けとなりましたが、その宿題返しも含めて、次回のニューヨーク訪問時にも必ず訪れたいと思います。

2023年11月11日

コメント
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