その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

W.シェイクスピア/演出:鵜山 仁「終わりよければすべてよし」 @新国立劇場中劇場

2023-11-26 07:28:22 | ミュージカル、演劇

 (もう1月前の記録です。アップし忘れて、公演期間も終了してますが・・・)

「尺には尺を」に続けて、「終わりよければすべてよし」を観劇。

この2作品、ともにシェイクスピアの中でも単純なハッピーエンドでは終わらないダークコメディである点、女性が主人公である点、男性とベッドをともにする女性が入れ替わるというベッドトリックを使っている点など、共通点が多い。今回の企画は、それを交互に演じることで、類似性と相違性があぶりだし、作品理解を深めようとするもの。かなり凝っている。

前日に「尺には尺を」を演じた役者さんたちが、全く違う役柄で、違う芝居をやっている。そのキャパシティ/ケイパビリティ、切り替えにプロフェッショナルを感じ、驚嘆した。

キャスティングは前日の「尺」よりも、この日の「終わり」の方が、よりピッタリはまっていて、舞台がとっても安定しているように感じられた(前日が不安定だったわけではなく、相対的な話である)。主人公ともいえるヘレナを演じる中嶋朋子はさすがのベテラン。猪突猛進、思い込んだら一途に行動するヘレナを好演。若き処女の役柄との年齢差も感じさせず、自然で違和感ない。大したものだと感心した。

個人的には、軽薄男ぺーローレスを演じた亀田佳明も笑わせてもらった。こういう奴って、いる・いる。また、シェイクスピア劇のどの作品でも重要な「道化」であるラヴァッチを吉村直が軽妙に演じていたのも印象的だった。全体的に舞台を落ち着いて感じさせてくれたのは、フランス王の岡本健一、ラフューの立川三貴、ルシヨン伯爵夫人の那須佐代子らも堅実な立ち回りによるところも大きいだろう。

舞台造形は、舞台前方の草や池は「尺」とそのまま同じものが使われていたようだ。舞台中央には、大きなテントのような幕が吊られ、幕の形の変化や照明で、場の設定替えや舞台効果が演出される。舞台に集中出来る必要十分な演出で好感度高い。

「尺」と同じダークコメディなのだが、「終わり」は「尺」に比較すると「ダーク」度は薄い。戯曲を読んで不思議ちゃんと感じたヘレナも思いを遂げて結婚でき、この結婚相手が、正直、男としてどうかよと思うバートラムではあるものの、本願成就である。この結婚がうまくいくかどうかはわからないが、「尺」が罰としてのアンジェロとマリアナの結婚や謎の侯爵からイザベラへの求婚で終わったのと比較すると、後味もずっと軽やかだ。

この2作品、とっても良かったので、できれば期間中にもう一度観てみたい。

10月19日(木)



2023/2024シーズン
シェイクスピア、ダークコメディ交互上演

尺には尺を
Measure for Measure

終わりよければすべてよし
All's Well That Ends Well

公演期間:2023年10月18日[水]~11月19日[日]

予定上演時間:
『尺には尺を』約2時間55分(第1幕95分 休憩20分 第2幕60分)
『終わりよければすべてよし』約3時間10分(第1幕85分 休憩20分 第2幕85分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】小田島雄志
【演出】鵜山 仁
【美術】乘峯雅寛
【照明】服部 基
【音響】上田好生
【衣裳】前田文子
【ヘアメイク】馮 啓孝
【演出助手】中嶋彩乃
【舞台監督】北条 孝

キャスト (役名:『尺には尺を』(左)/『終わりよければすべてよし』(右))
岡本健一:アンジェロ/フランス王
浦井健治:クローディオ/バートラム
中嶋朋子:マリアナ/ヘレナ
ソニン:イザベラ/ダイアナ 
立川三貴:典獄/ラフュー
吉村 直:バーナーダイン/紳士1、ラヴァッチ
木下浩之:ヴィンセンシオ/フィレンツェ公爵
那須佐代子:オーヴァーダン/ルシヨン伯爵夫人
勝部演之:判事/リナルドー
小長谷勝彦:ポンピー/兵士2
下総源太朗:エスカラス/デュメーン兄 
藤木久美子:フランシスカ/キャピレット
川辺邦弘:エルボー・紳士2/兵士1
亀田佳明:フロス・アブホーソン/ぺーローレス
永田江里:ジュリエット/マリアナ
内藤裕志:ピーター/紳士
須藤瑞己:召使い/従者
福士永大:使者/小姓
宮津侑生:ルーシオ/デュメーン弟 

 

コメント
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