そのマクドナルドは、まわりを畑や空き地に囲まれた中にぽつねんと建っている。
あたかも荒涼としたロードサイドのバグダッド・カフェを彷彿とさせる。
今にも降り出しそうに厚く垂れ込めた雲の下、私は頬に生暖かい夏の名残りの風を受けながら、細い道をマクドへ向かう。
その道は正面入り口ではなく、小さなドアの狭い裏口へと続いている。
裏口といえど、従業員専用ではなく、歴とした顧客用の入口だ。
ドアを開けて中へ入ると、朝の7時半ということもあり、閑散とした店内には若いカップルがいるだけだった。
男のスーツや緩んだネクタイ、女のほつれ髪から想像するに、たぶん近くのラブホテルからの朝帰りで、社内恋愛の出社前の気怠いひと時という風情だ。
あとのテーブルや椅子は、整然と人待ち顔で佇んでいた。
私はカウンターで、ポイントカードを差し出し、ソーセージマフィンとアイスコーヒーのSサイズを注文する。
なんとも貧相な朝食だが、まわりの目を気にするほどの矜持も持ち合わせていない。
ポケットの小銭の中から手探りで百円硬貨2枚を選び出し、精算トレーに載せる。
マフィンとコーヒーを受け取ると、カップルから遠い隅のテーブルに腰を下ろす。
天井のスピーカーからは、タイトルは知らないが、聴いたことのあるJポップの曲が流れている。
甘い声の女性歌手がテンポよく歌っている。
アイスコーヒーのカップのフタを取り、シロップとフレッシュを入れ、ストローで軽くステアする。
フタを戻し差し込み口にストローを差し込む。
ひと口飲んでから、傍らのソーセージマフィンの包装を解く。
ハンバーガーのバンズより固めで弾力のあるマフィンと、豚肉のパティ、スライスチーズの三位一体感が私の好みだ。
ひと口頬張ると、朝の香ばしさが鼻腔をくすぐる。
そのマフィンの弾力性ゆえに、咀嚼回数はハンバーガーより多く必要だ。
そして噛むほどにそこはかとない滋味が広がり、それがパティ、チーズと渾然一体となり、得も言われぬ風味を醸し出す。
起床時の空腹と相まって、そんなチープな朝食がことのほか旨く感じる。
それをアイスコーヒーでゆっくりと胃の腑へと流し込む。
日中の鬱とした心持ちを束の間忘れさせてくれる、そんな朝のひと時が、私にとってのささやかな至福の時間だ。
あたかも荒涼としたロードサイドのバグダッド・カフェを彷彿とさせる。
今にも降り出しそうに厚く垂れ込めた雲の下、私は頬に生暖かい夏の名残りの風を受けながら、細い道をマクドへ向かう。
その道は正面入り口ではなく、小さなドアの狭い裏口へと続いている。
裏口といえど、従業員専用ではなく、歴とした顧客用の入口だ。
ドアを開けて中へ入ると、朝の7時半ということもあり、閑散とした店内には若いカップルがいるだけだった。
男のスーツや緩んだネクタイ、女のほつれ髪から想像するに、たぶん近くのラブホテルからの朝帰りで、社内恋愛の出社前の気怠いひと時という風情だ。
あとのテーブルや椅子は、整然と人待ち顔で佇んでいた。
私はカウンターで、ポイントカードを差し出し、ソーセージマフィンとアイスコーヒーのSサイズを注文する。
なんとも貧相な朝食だが、まわりの目を気にするほどの矜持も持ち合わせていない。
ポケットの小銭の中から手探りで百円硬貨2枚を選び出し、精算トレーに載せる。
マフィンとコーヒーを受け取ると、カップルから遠い隅のテーブルに腰を下ろす。
天井のスピーカーからは、タイトルは知らないが、聴いたことのあるJポップの曲が流れている。
甘い声の女性歌手がテンポよく歌っている。
アイスコーヒーのカップのフタを取り、シロップとフレッシュを入れ、ストローで軽くステアする。
フタを戻し差し込み口にストローを差し込む。
ひと口飲んでから、傍らのソーセージマフィンの包装を解く。
ハンバーガーのバンズより固めで弾力のあるマフィンと、豚肉のパティ、スライスチーズの三位一体感が私の好みだ。
ひと口頬張ると、朝の香ばしさが鼻腔をくすぐる。
そのマフィンの弾力性ゆえに、咀嚼回数はハンバーガーより多く必要だ。
そして噛むほどにそこはかとない滋味が広がり、それがパティ、チーズと渾然一体となり、得も言われぬ風味を醸し出す。
起床時の空腹と相まって、そんなチープな朝食がことのほか旨く感じる。
それをアイスコーヒーでゆっくりと胃の腑へと流し込む。
日中の鬱とした心持ちを束の間忘れさせてくれる、そんな朝のひと時が、私にとってのささやかな至福の時間だ。