虹色仮面 通信

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文化財(SL)を保護する難しさ

2022-08-25 07:50:35 | 文化
産経新聞より。

全国各地の公園や駅前などに展示されている蒸気機関車(SL)で、放置されて保存状態が悪い車両について、地元自治体による無償譲渡や解体処分が相次いでいる。
SLの現役引退が始まった1970年代、巻き起こったSLブームにあやかろうと、町のシンボルとして自治体などが当時の国鉄から貸与を受けたが、それから半世紀が経過。
財政難で維持費用が削られたり、車両のメンテナンスをする人が高齢化したりと状況は厳しさを増している。

今月1日、滋賀県多賀町の空き地に放置されていたSLD51形(デゴイチ)のナンバープレートの譲与式が行われた。同町から無償譲渡を受けたのは、愛知県豊田市の男性。
「動かせるようにして、次の世代に渡したい」と熱い思いを語った。

このデゴイチが多賀町にやってきたのは昭和51年。
レストランや列車ホテルを併設した、関西では初のSLパークのシンボルとして人気を集めた。
しかし、わずか数年で廃業。
建物と客車は撤去されたが、デゴイチだけが残り、町はJRから譲渡された平成23年から引き取り先を探していた。

デゴイチは約40年、野ざらし状態だったため、車体はさびだらけで色あせ、腐食も進んでいた。
4枚あったナンバープレートは盗まれて1枚しか残っていない。
医師で鉄道文化財アドバイザーの笹田昌宏さん(50)は「全国でもワーストに近い状態だった」と指摘する。

町にとっては「負の遺産」となっており、久保久良町長は「大切にしてくれる方に引き取ってもらった」と胸をなでおろした。

■財政難で相次ぎ処分

国鉄から貸与されたSLは全国に約500両。
当初は歓迎されたはずだが、なぜ持て余される存在になるのか。
笹田さんは「SLに情熱を持った世代が高齢化し、若い世代に思いが引き継がれていない」と説明する。
現在も良好な状態のSLは、地元ボランティアらによって手入れされているケースも多いという。

また、SLのメンテナンスに費用がかかることも要因だ。
福岡県志免(しめ)町は25年、公園に放置されたSL9600形を移設しようと約1300万円の予算案を議会に提出したが、数年に1度、約200万円の補修費がかかることもあり、否決された。
結局、約300万円かけて解体されることになった。

しかしその後、九州唯一の扇形車庫を持つ大分県玖珠(くす)町から引き取りの申し出があり、解体を免れた。
ボロボロだった姿は修復され、同町の豊後森(ぶんごもり)機関庫公園に展示されている。

多賀町のデゴイチも志免町の9600形も幸運だったが、自治体の財政難で展示が維持できず、処分されるケースは多い。
SLに使用されているアスベスト(石綿)の健康被害がクローズアップされたことや、東日本大震災で車体にダメージを受けたことが逆風となり、すでに数十両が解体されたとみられる。

SLの放置や解体を減らすにはどんな手立てがあるのか。
笹田さんは「地元の人たちに、SLが後世に残す価値のあるものだと理解してもらう必要がある」と話す。
さらに展示方法にも問題があるとして「置いておくだけでなく、子供たちの社会教育、観光振興や地域おこしに役立てるなどの活用法を考えるべきだ」と提言している。<了>

文化財の保護は、やはり社会、とくに経済に余裕がないと厳しいのです。
決して綺麗事では片付けられないと思っています。

現代(ここ25~30年)の日本は低成長時代であり、再び浮上することも難しいだろう。
ということは、民間の活力も期待できないし、行政の税収も減る一方なはず。
それに加えて、現役世代の人口減少が追い打ちをかける。これからの日本は先細っていく社会なのです。

そんな状況で、古い文化財を維持するのはとても難しいと言わざるを得ません。
あとは個人で維持にかかる費用を捻出できる人(資産家など)やクラウドファンディングで維持する資金を募るなどの方法になるのではなかろうか?
それもいずれは先細りし、再び同様な問題に直面するに違いない。

残念ではあるが、どんどんなくなっていくのは仕方がないと思っています。
そのような社会にした多くの日本人に責任があるのです。
あとは旧車じゃないけど、海外に流出して、心得のある方々に保存してもらうか。

国内に存在する多くのSL車両は、雨ざらしで錆が多くなり、いずれ腐ってしまい、そのまま放置されるんじゃないかな。
解体する費用すら捻出できない可能性も高くなるから。
それでも存在するだけでマシとするか否かは、個々の感じ方や置かれた状況に依るところも大きいと思いますね。

書いていて情けなくなりますが、現実として直視しなくてはなりません。