Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2012年11月10日 | 音楽
 山田和樹指揮の日本フィルを聴いた。山田さん(以下、親しみを込めてヤマカズさんと呼ばせてもらう)自身がプログラムに書いているように、実に多彩なプログラミングだった。

 1曲目は野平一郎の「グリーティング・プレリュード」。弦楽合奏のための曲だ。種明かしをするのは憚られるが、ともかくある有名なメロディーを解体した曲だ。最後にそのメロディーが登場して種明かしとなる。発想としては面白いが、曲としてはどうか――。

 2曲目はガーシュウィンのピアノ協奏曲。ピアノ独奏はパスカル・ロジェ。出だしの音からして美しい。さすがは名手だ。第2楽章のソロの部分はラヴェルのように聴こえた。ジャズの要素が前に出るのではなく、クラシックの音楽としての演奏。ヤマカズさん指揮の日本フィルもそのような演奏だった。

 拍手に応えてアンコールが演奏された。サティの「グノシエンヌ」第2番。これもよかった。

 休憩をはさんで3曲目はヴァレーズの「チューニング・アップ」。これは抱腹絶倒だった。楽員が三々五々ステージに出てきてチューニングを始める。オーボエの音がいやに大きい。各楽器が好き勝手なことをやる。そのうちサイレンまで鳴る(これはヴァレーズのサインのようなものだ)。以上の混乱状態がこの曲。爆笑のうちに終わる。

 昔ヴァレーズは真の天才ではないかと思って、その作品をすべて聴いてみようと試みた時期がある。そのときにこの曲も聴いた。腰が抜けそうになった(笑い)。でもまさか生で聴けるとは思ってもいなかった。生で聴いたら、昔の記憶よりも、もっと面白かった。

 4曲目の前にチューニングがあった。もう一度「チューニング・アップ」が始まるのかと思った(笑い)。聴衆からは笑いが漏れ、楽員も笑っていた。ホール全体が和やかなムードになった。4曲目は「展覧会の絵」だった。ただしラヴェル編曲のものではなく、ストコフスキー編曲のもの。これがすこぶる面白かった。山口眞子氏のプログラム・ノートによれば「ロシア的要素を強調」しているとのことだが、むしろストラヴィンスキーや新ウィーン楽派、そしてそれこそヴァレーズ(代表作の一つ「アメリカ」はストコフスキーが初演したそうだ)を経た編曲だということを強く感じた。

 ヤマカズさんは国内外での活発な活動で多忙のようだが、質の低下を招かない点がさすがだ。能力のキャパシティが大きいのだろう。
(2012.11.9.サントリーホール)
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