Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パリ日記5:ヴォーチェ弦楽四重奏団

2014年11月09日 | 音楽
 翌日は帰国日だったが、夜便をとったので、日中は空いていた。朝ホテルをチェックアウトして(荷物はホテルに預けて)、チュイルリー公園に行った。前日までは暖かかったが、この日は寒くなった。枯葉が舞って晩秋のパリらしくなった。

 チュイルリー公園の外れにオランジュリー美術館がある。セーヌ川の対岸のオルセー美術館は長蛇の列だが、こちらは空いていた。モネの大作「睡蓮」4点。さすがに力がある。間近で見るとキャンバスの継ぎ目がよく分かった。必ずしも線がつながっていないことを発見した。

 メトロに乗ってシャンゼリゼ劇場へ。室内楽の演奏会。当日券で入った。かなり盛況だったが、すぐに空席が見つかった(全席自由席)。

 ヴォーチェ弦楽四重奏団(今年12月に来日予定だ)にヴィオラ奏者のリーズ・ベルトーLise Berthaudが加わった演奏会だ。

 1曲目はモーツァルトの弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515。各パートの均衡がとれて、この曲のあるべき姿を再現した演奏だ。なるほど、この曲はK.500番台に相応しい成熟した書法なのだなと、よく納得できる演奏だった。姉妹作の第4番ト短調K.516(小林秀雄が「疾走するかなしみ」というアンリ・ゲオンの言葉を引用した曲だ)に惹かれがちだが、第3番もそれと拮抗する名作だ。

 2曲目はフィリップ・エルサンPhilippe Hersant(1948‐)のヴィオラ独奏曲「パヴァーヌ」。5分ほどの短い曲だ。ノスタルジックなメロディーに不協和音のきしみが交錯する。魅力的な曲だ。独奏はベルトー。作曲者もカーテンコールに現れた。満場の拍手。

 3曲目はブラームスの弦楽五重奏曲第2番ト長調作品111。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交替した。それがこの団体のやり方なのだろう。面白いことに、第1と第2が交替すると、演奏のイメージが変わった。ブラームスではよりアグレッシヴな演奏になった。それがこの曲に合っていた。最晩年の、すでに交響曲第4番もドッペル・コンチェルトも書き上げたブラームスの、なおも内に燃える情熱の炎。

 アンコールにドヴォルザークの弦楽五重奏曲変ホ長調作品97の第2楽章(民族舞曲風のスケルツォ楽章)が演奏された。第1ヴィオラのソロが魅力的だ。モーツァルトでもそうだったが、ヴィオラがソロを取っても内声部が薄くならないのは、弦楽五重奏ならではのことだ。
(2014.11.2.シャンゼリゼ劇場)
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