Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「アイナダマール」雑感

2014年11月19日 | 音楽
 日生劇場の「アイナダマール」を観た感想を(拙いながら)アップしたので、他の方のブログも拝見した。左欄のブックマークに登録しているブログは、いずれもそのご意見を尊重している方々なので、興味深く読ませてもらった。

 感想も評価も、人さまざまであっていいのだが、さてこの作品、全体的にはどう受け止められたのだろうと、さぐってみたい気もする。

 昨年の「リア」、一昨年の「メデア」のような現代オペラの、直球ど真ん中という感じの作品と比べると、「アイナダマール」はラテン音楽と現代オペラとのあいだを行き来するユニークな作品だ。そのジャンル横断的なエンタテイメント性をよしとするか否かは、人によって分かれるかもしれない。

 わたし自身はすごく面白かった。だが、正直にいうと、事前にCDで聴いていたときほど面白くはなかった。ラテン音楽の感じがしなかったからだ。その点が不満だったので、ブログに書かせてもらった。たぶん演奏のせいだと思う。

 ゴリホフの音楽は「マルコ受難曲」しか知らないが、初めてその曲を聴いたときの衝撃は、今でも忘れられない。どういう音楽かは書かないでおくので、ナクソス・ミュージック・ライブラリーにアクセス可能な方には、一聴をお勧めしたい。

 付言すると、「マルコ受難曲」は2000年のバッハ・イヤーのためにシュトゥットガルトの国際バッハ・アカデミーが委嘱した作品の一つだ。同アカデミーは4人の作曲家に委嘱した。グバイドゥーリナにはヨハネ受難曲を、タン・ドゥンにはマタイ受難曲を、リームにはルカ受難曲を、そしてゴリホフにはマルコ受難曲を。わたしは幸いにも、後日、グバイドゥーリナとタン・ドゥンの受難曲を生で聴く機会を得た。グバイドゥーリナの曲には魂が震えた。

 話は変わるが、「アイナダマール」の公演プログラムに台本作家デイヴィッド・ヘンリー・ウォンのエッセイが掲載されていた。大変興味深かった。このオペラは2003年にタングルウッド音楽祭で初演されたが、2005年にサンタフェ・オペラで再演される際に改訂された。その経緯や内容が具体的に書かれていた。

 なるほど、台本、ひいてはオペラは、こうやって芸術的に高められるのか――と、創作の現場を覗くような(現場の創造的な空気を吸うような)思いがした。そういう改訂を経て、この傑作オペラ(‘現代オペラ’の尺度では測れないオペラ)が誕生したのだと、感慨もひとしおだった。
コメント
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