Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ノセダ/N響

2015年01月18日 | 音楽
 ジャナンドレア・ノセダ指揮N響のCプロ。先週はAプロを聴いた。両日の印象はかなり違う。Aプロでは、フォーレはともかく、プロコフィエフとベートーヴェンは熱血型の演奏だった。だが、今回のCプロでは、全体的にオーケストラの響きを整える演奏だった。ノセダの‘芸’の幅広さだろうか。

 1曲目はリムスキー・コルサコフの組曲「見えない町キーテジの物語」。名前は聞いたことがあるが、珍しい曲だ。ロシア民謡風の旋律が出てくる。いかにもリムスキー・コルサコフらしい曲だ。くつろいで楽しんだ。演奏もよかった。音を抑えた透徹した美しさがあった。たいしたものだ。感心した。でも、演奏が穏やかだったせいか、暖房が効いていたせいか、睡魔に襲われた。もったいないことをした。

 2曲目のプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番も優れた演奏だった。これも、とくに第1楽章から第2楽章にかけては、抑えた音の美しさがあった。

 ヴァイオリン独奏はジェームズ・エーネス。N響には何度か登場しているが、わたしは初めてだ。たとえていえば、高級ホテルのピカピカに磨き上げられたロビーで演奏しているような演奏だ。塵ひとつない高性能な演奏。アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番の第4楽章が演奏された。これも‘高級ホテル’云々の印象を裏打ちした。

 3曲目はムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲「展覧会の絵」。凡百の演奏とは一線を画す演奏だった。音に緊張感があり、フレーズには呼吸感があり、アンサンブルは引き締まっていた。優秀な指揮者と優秀なオーケストラが出会って、やる気を出して演奏した一流の演奏だ。

 偶然だが、3日連続で編曲物を聴いた。15日には下野竜也/都響でシュネーベルの「シューベルト・ファンタジー」、16日には準・メルクル/読響でブラームス(シェーンベルク編曲)の「ピアノ四重奏曲第1番」、そしてこの「展覧会の絵」。なので、どうしても、編曲について、あれこれ想いが浮かんだ。

 3曲とも編曲のあり方が違う。シュネーベルは、シューベルトを素材にした‘作曲’に近い。自分の音世界にシューベルトを断片化して嵌めこんでいる。一方、シェーンベルクとラヴェルは‘編曲’の範疇に(一応は)とどまっている。でも、シェーンベルクの異化効果は、ラヴェルと同列に論じられるだろうか。両者の‘編曲’は微妙に違うような気がする――。
(2015.1.17.NHKホール)
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