Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

エヴァ・メイ/コルステン/読響

2015年03月20日 | 音楽
 わたしは(あまり選り好みせずに)なんでも聴く方だが、モーツァルトは別格だ。モーツァルトは特別の位置を占めている。読響がオール・モーツァルト・プロを組んだので、聴きに出かけた。指揮はジェラール・コルステン。ソプラノ独唱はエヴァ・メイ。お二人はご夫婦だそうだ。

 1曲目は交響曲第38番「プラハ」。アダージョの序奏が、けっしてルーティンに流れず、独特なドラマトゥルギーをもって演奏された。おっと思った。アレグロの主部に入ると、よく流れる。だが、機械的ではない。精巧な職人仕事のような感触だった。

 ノン・ヴィブラート奏法なので、スリムな音だ。引き締まってシャープな造形。弦が美しい。アンサンブルが見事だ。読響は3月7~8日にユトレヒトとブリュッセルでメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」を演奏したはずだ。帰国後初めての演奏会だが、まったくスタイルの違う演奏によく付いていった。

 次にエヴァ・メイが登場してコンサート・アリアを2曲。「あわれ、ここはいずこ」K.369と「うるわしい恋人よ、さようなら」K.528。コンサート・アリアを聴く機会は、ありそうで、ないものだと思った。久しぶりに聴くコンサート・アリアが新鮮だった。

 休憩後は「皇帝ティートの慈悲」序曲。オーケストラの音色が明るい。「プラハ」のときは、くすんだ音色だった。急に色彩的になった。なぜだろう。しかもよく鳴る。どんな秘密があるのだろう。はっきり計算されているようだった。

 再びエヴァ・メイが登場して「皇帝ティートの慈悲」から「夢に見し花嫁姿」。バセットホルンのオブリガート付きのロンドだ。バセットホルンは首席奏者の藤井洋子。少々控えめだった。エヴァ・メイと張り合うくらいでもよかったのでは――。

 次に「イドメネオ」からエレットラの怒りのアリア。アンコールに「後宮よりの逃走」からブロンテの喜びのアリア。エヴァ・メイの独壇場だ。超絶的なテクニックとか、大ホールに響き渡る声とか、そんなものを売り物にする歌手ではなく、正統的な表現が本物の歌手だ。

 最後に交響曲第35番「ハフナー」。心地よい音。「プラハ」と同様に12型だが、よく鳴る。普段は大編成の飽和した音に慣れているので、こういう小編成の音が快い。ホールがよく鳴っていることに気付いた。そんなことに気が付くのも久しぶりだ。その響きに身を浸した。
(2015.3.19.サントリーホール)
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