Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2015年09月05日 | 音楽
 山田和樹指揮の日本フィル。いつものようにプログラムにストーリー性があるので、聴く方としても気合が入る。今回は別宮貞雄がテーマだ。

 1曲目は別宮が師事したミヨーのバレエ音楽「天地創造」。ジャズのイディオムがふんだんに取り入れられた曲だ。トロンボーンやトランペットの切れ味鋭いプレイが光り、またオーボエも聴かせたが、なんといっても、客演のアルト・サックス奏者、上野耕平の豊かな音に惹かれた。

 2曲目は別宮が音楽上の範としたベートーヴェンの交響曲第1番。山田和樹がプレトークで語っていたように、弦は16型、管は倍管。「時代の流れにあえて逆らう」編成だ。昔――カラヤン全盛の時代まで――はこういう編成でやっていた。ピリオド楽器の時代に入って否定された。それをもう一度やることに、意外な新鮮さがある。

 ゆったりしたテンポで始まる。上述の編成といいテンポといい、山田和樹のベートーヴェン観というよりも、一種の実験としてやっているような感じがあった。今の時代にこうやったらどうなるかという実験。

 でも、そんな単純な話ではなかった。第2楽章の冒頭、第2ヴァイオリンから始まり、ヴィオラとチェロに受け継がれ、コントラバス、そして第1ヴァイオリンが入ってくる冒頭の部分が、各パート1人で演奏された。これには驚いた。この演奏、どんな仕掛けが込められているか分からないなと、一気に緊張した。

 第3楽章まではゆったりしたテンポだった。ところが第4楽章に入ったら君子豹変!まるで高速回転の機械を見るような快速テンポだった。お見事!たっぷり楽しませてもらった。

 3曲目はイベールの「アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内協奏曲」。ソロは前述の上野耕平。艶のある音色、音楽性、ともに唖然とするほどだ。1992年生まれの若き才能の登場だ。オーケストラも明るい音色で応えていた。弦は10‐8‐6‐4‐3の編成。

 メインは別宮貞雄の交響曲第1番。日本フィル・シリーズ第7作。1962年に渡邉暁雄指揮日本フィルによって初演された。堂々たる交響曲。同シリーズ第1作の矢代秋雄の交響曲(1958年)、第14作の松村禎三の交響曲(1965年)などと併せて、この時代、日本の創作活動は一つのピークを迎えていたのではないだろうかと、そんな感慨に襲われた。演奏もこの作品の真価を伝えようとする気概に満ちたものだった。
(2015.9.4.サントリーホール)
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