ミヒャエル・ボーダーが初めて読響を振った。ボーダーは地味な存在かもしれないが、キャリア、実力とも十分な指揮者だ。さて、読響との初共演はどうなるか。
プログラムは後期ロマン派の作品で組まれた。先に曲目を記すと、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、リストのピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏はスイス生まれの若手ピアニスト、フランチェスコ・ピエモンテージ)そしてツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」。なかなか濃いプログラムだ。
ボーダーの指揮は新国立劇場とベルリン国立歌劇場(リンデン・オーパー)で聴いたことがあるが、それらのオペラ公演では、がっしりした構成と重みのある音という印象があった。でも、今回の演奏では、がっしりした構成はそのとおりだが、音は軽いというか、フワッとした感触で、膨らみのある鳴り方をしていた。
1曲目の「ドン・ファン」は音のまとまりが今一つだった。前述の特徴はすでに現れていたが、オーケストラ全体がしっくりまとまるには至らなかった。焦点が定まらないまま終わった。
2曲目は協奏曲なので、オーケストラにはあまり期待していなかったが、どうしてどうして、音がしっくりまとまってきた。ピアノ協奏曲の第1番と比べて、紆余曲折が多く、一直線には進まないこの曲だが、その道筋を丁寧に辿っていた。
ピアノ独奏のピエモンテージは、鳴らし過ぎず、オーケストラとよく絡んでいた。優秀なピアニストだと思う。アンコールにリストの「巡礼の年」第1年「スイス」から「ヴァレンシュタットの湖畔にて」を演奏した。波の揺らめきのような音型の柔らかさ、そこから浮き出る旋律線の明瞭さ、ともに快い。
3曲目の「人魚姫」も好調に始まった。前曲と比べて彫りの深い音楽なので、それを反映して演奏に明暗の対比が加わった。全3楽章からなる曲だが、第2楽章に入るとオーケストラはしなやかに、かつ滑らかにドラマを語った。煌めくような箇所では、オペラ「フィレンツェの悲劇」を想い出した。帰宅後、調べてみたら、作曲年代には開きがあるが(「フィレンツェの悲劇」のほうが12~13年後だ)、通底するものがあるようだ。
ボーダーはさすがにオペラ指揮者だ。まるでオペラのような演奏をした。オーケストラ曲なので、声はないが、声の部分もオーケストラに取り込んだような曲。そんなふうに聴こえた。
(2016.1.14.サントリーホール)
プログラムは後期ロマン派の作品で組まれた。先に曲目を記すと、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、リストのピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏はスイス生まれの若手ピアニスト、フランチェスコ・ピエモンテージ)そしてツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」。なかなか濃いプログラムだ。
ボーダーの指揮は新国立劇場とベルリン国立歌劇場(リンデン・オーパー)で聴いたことがあるが、それらのオペラ公演では、がっしりした構成と重みのある音という印象があった。でも、今回の演奏では、がっしりした構成はそのとおりだが、音は軽いというか、フワッとした感触で、膨らみのある鳴り方をしていた。
1曲目の「ドン・ファン」は音のまとまりが今一つだった。前述の特徴はすでに現れていたが、オーケストラ全体がしっくりまとまるには至らなかった。焦点が定まらないまま終わった。
2曲目は協奏曲なので、オーケストラにはあまり期待していなかったが、どうしてどうして、音がしっくりまとまってきた。ピアノ協奏曲の第1番と比べて、紆余曲折が多く、一直線には進まないこの曲だが、その道筋を丁寧に辿っていた。
ピアノ独奏のピエモンテージは、鳴らし過ぎず、オーケストラとよく絡んでいた。優秀なピアニストだと思う。アンコールにリストの「巡礼の年」第1年「スイス」から「ヴァレンシュタットの湖畔にて」を演奏した。波の揺らめきのような音型の柔らかさ、そこから浮き出る旋律線の明瞭さ、ともに快い。
3曲目の「人魚姫」も好調に始まった。前曲と比べて彫りの深い音楽なので、それを反映して演奏に明暗の対比が加わった。全3楽章からなる曲だが、第2楽章に入るとオーケストラはしなやかに、かつ滑らかにドラマを語った。煌めくような箇所では、オペラ「フィレンツェの悲劇」を想い出した。帰宅後、調べてみたら、作曲年代には開きがあるが(「フィレンツェの悲劇」のほうが12~13年後だ)、通底するものがあるようだ。
ボーダーはさすがにオペラ指揮者だ。まるでオペラのような演奏をした。オーケストラ曲なので、声はないが、声の部分もオーケストラに取り込んだような曲。そんなふうに聴こえた。
(2016.1.14.サントリーホール)