Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ギルバート/都響

2016年01月28日 | 音楽
 旅行中に観たオペラの記録を書く順番だが、帰国したその夜にアラン・ギルバート指揮都響の演奏会に出かけたので、まず先にその感想から。

 多くの方と同じように、わたしも2011年7月の初共演に強い感銘を受けたので、この演奏会を楽しみにしていた。1月26日の定期は(旅行中なので)聴けないため、同プログラムの翌日のチケットを買っておいた。

 1曲目は武満徹の「トゥイル・バイ・トワイライト」。この曲はモートン・フェルドマンの追悼曲なので、その作風を反映しているのだろう、ゆったりとして、動きの少ない、あえていえば地味な曲だと、今までは思っていた。でも、ギルバートの指揮だと、がっしりした骨格があり、劇的なインパクトがある曲のように聴こえた。

 面白いものだと思った。日本人の指揮だとこうはならない。幾筋もの繊維がもつれ合うような、あるいは何かがたゆたうような、そんな演奏になると思う。彼我の感性の違いだろうか。

 武満徹は今年が没後20年だ。生前は国際的に成功した日本人で初めての作曲家というイメージが強かったが(そしてそれは正しいのだが)、今から思うと日本的な感性を人一倍秘めていた作曲家なのかもしれない。その面に反応するか、別な面に反応するか。それによって演奏の性格が分かれてくるのかもしれない。

 2曲目はシベリウスの交響詩「エン・サガ(伝説)」。前述の初共演のときの記憶が蘇ってくるような豊かな鳴り方だ。大柄な演奏。でも、大味ではない。恰幅のいい演奏といったほうがいいかもしれない。ギルバート/都響のコンビの個性が早くも現れているようだ。

 最後のクラリネットの長いソロに惹かれた。首席奏者のサトーミチヨ氏の演奏。同氏は次のワーグナーでも名演を聴かせてくれた。

 3曲目のワーグナーは「ニーベルンクの指輪」からの抜粋をオーケストラ曲にまとめたもの。演奏時間は約52分(プログラムの表記による)。「ワルキューレの騎行」から始まって最後の「ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲」までストーリーどおりに進む。特徴的なのは1曲1曲をたっぷり聴かせてくれることだ。かいつまんで編集する方針ではない。

 「神々の黄昏」の序奏(「夜明け」)から「ジークフリートのラインへの旅」に至る部分が、しなやかに、うねるように演奏された。都響の弦の、まばゆい光沢のある音色に、思わず身を乗り出した。
(2016.1.27.東京オペラシティ)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする